本日は、野村ダムより約10数㎞下流にある鹿野川ダムの放流問題について考察しましょう。

 周知のように、鹿野川ダムには、野村ダムの放流量、黒瀬川および肘川流域に降った雨量、比較的小さな河辺川流域の水を集める山鳥坂(やまとさか)ダムの放流量が流れてきます。

 このダム放流においては、当然のことながら上流にある2つのダム放流量を考慮しての操作さがなされることが重要でした。

 すなわち、上流の野村ダムから放流された水は、途中の野村町において氾濫したもの以外は、すべて、この鹿野川に流下してきます。

 野村ダムにおいては、すでに述べてきたように、7日午前6時に、事前放流毎秒300トンから脱し、放流を急速に増加させていきます。

 野村ダムへの流入量は急激に増加し、午前5時20分には貯水率が100%に達します。

 2018-07-28 (3)
     
 すでに、明らかにしてきたように、野村ダムにおいては午前6時に放流量を急激に増やし、6時32分までのわずか32分間において、その増加量は毎秒300トンから計画最大放流量の毎秒1000トンにまで急激に放流量が増やされています。

 これらの放流量は、ほぼすべて下流の鹿野川ダムに流下し、その流下時間はおよそ1時間後です。

 この放流量の到達具合を時間を追って調べてみましょう。
           
 野村ダム放流量  時刻 鹿野川ダムへの到着時刻 鹿野川ダムの流入量
   300トン/s         6:00                   7:00       1260トン/s
         1000トン/s         6:32                   7:32                          2692トン/s
         1452トン/s       6:50               7:50                     3225トン/s
        1797トン/s     7:50               8:50                     3726トン/s

 この表からも明らかなように、野村ダムの放流量は、6時から毎秒300トンを超えて増加し、6時32分に計画最大放流量の毎秒1000トンを記録しています。

 これらの放流量は、約1時間を経過して鹿野川ダムに流入しますが、7時の時点での流入量は毎秒1260トンと少なく、鹿野川ダムの計画最大放流量毎秒1500トンには達していません。

 鹿野川ダムへの流入量と野村ダムの放流量の比は、4.2という値を示しています。

 この時点では、野村ダムの放流量は、鹿野川ダムへの流入量に大きな影響を与えておらず、その割合、野村ダムの放流量は、鹿野川ダムへの流入量は、24%、1/4程度です。

 ところが、野村ダムにおいて急激に放流量を増加させて計画最大放流量の毎秒1000トンを超えた水が流下して鹿野川ダムに達した7時32分においては、その流入量は毎秒2692トンにも達しています。

 この時点で野村ダム放流量は、鹿野川ダムへの流入量は37%に上昇しています。

 さらに、7時50分における同比は約45%となり、徐々に増加しています。

 ただし、この時点においては、その何割かが、野村町付近で氾濫していますので、実際は、その値よりも低下しているはずです。

 8時50分における同比は約48%です。

 この値も、同じく氾濫分があるので、より小さい値になっていると思います。

 以上のことから、野村ダムからの異常な放流量が鹿野川ダムへの流入量は、およそ30~40数%の範囲にあったとみなしてよいでしょう。

 この30~40数%の野村ダムからの流入量を考慮して、鹿野川ダム放流がなされたのかどうか、これが小さくない問題といえます。

 野村ダムからは、逐一、その放流量に関する連絡が入ってきていたと思われますので、確実に、その分の流入を考慮して操作を行う必要がありました。

 同時に、流域内の雨量計からは逐一降雨データが送られてきますので、それらを考慮して事前放流がなされることが非常に重要なことでした。

 このようなことを考慮して、ダム操作を行うことが当然なされるべきでした。

 その実際は、どうだったのでしょうか。

 もちろん、この操作は、ダムの放流規則に基づいて行われるべきであり、その規則に従って操作が行われたのかどうか、これが重要な問題になります。

 そこで、このダム操作について考察するうえで、非常に参考になる鹿野川ダムのデータが、『リザバー』2006年3月号に下記の図-2として掲載されていましたので示します。

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 これは、2004年8月に発生した台風16号によってもたらされた豪雨による鹿野川ダム洪水調節図です(座談会「平成16、17年異常洪水対応と課題」における図-2より引用)。

 この図を参考にしながら、今回の2018年の異常ダム操作を次回で詳しく考察しましょう(つづく)。

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 ブルーセージ(大成研究所の前庭にて)