一度誤りを犯すと、そのせいで、その次にはさらに大きな過ちを重ねる、そして、取り返しのつかないことになる。

   世の中には、このようなことがよく起こっています。

 今回の「ダム災害」においては、それと似たことが起きているように思われます。

 その第1は、ダム貯水池が満杯になっているにも関わらず、その後50分間も、調節放流のままでいたことです。

 この段階では、このダム貯水率100%を前後して、そして流入量が増えることを雨量データから推測して、予備放流することによってダム貯水率を低下させる判断と処置が必要でした。

 第2は、計画最大放流量毎秒1000トンのことを考慮せずに、それを一気に超えて短時間に放流量を増やしていったことでした。
 
 この増加量は、わずか20分間に毎秒1000トンにも達していましたので、下流では、水位が急上昇し、それによって生まれた越流後は、急激な水位の上昇によって住民のみなさんが逃げまどい、死亡に至ったことが推測されます。 
nomura-55

 国土交通省四国地方整備局側の説明は、「ダムが満杯になったので止むを得なかった」という主旨の説明を行ったとの報道ですが、これには、以下の理由で賛同することはできません。

 ①20分間で毎秒約1000トンの放流増加を行ったことは、決して「止むを得なかった」と言い訳して済む問題ではありません。

 ②しかも、その急激な放流増加が、計画最大放流量毎秒1000トンを軽く超えてなされたという事実が明らかであり、「これを止むを得なかった」というのであれば、下流の越流氾濫を起こしても止むを得なかったといっていることと同じになります。

 ここで、ダムが満杯になったから、後は流入量をそのまま流すしかなかった、これは止むを得ない処置だったと、まことしやかな説明がなされています。

 それを聞いて、その判断を鵜呑みにした学者が、テレビにおいて、その「止むを得なかった」発言に追従した発言をなさっていました。

 ここには、オウム返しで追従発言を行う学者の体質が垣間見えていましたが、こんなことでは、とても日本を代表することはできませんね。

 繰り返しになりますが、「ダムが満杯になったから、そのまま流入した分を放流するしかない」と主張するのであれば、それは5時20分に満杯になった時点で行うべきことだったのです。

 それができずに、ダム満杯後において40分間も、大量に貯水し続けた、これがダム放流記録に示されている事実なのです。

 この事実がある以上、軽々に「止むを得なかった」ということはできないのです。

 さて、解説を続けるために、上図を再録しますが、事態がさらに深刻化したのは、計画最大放流量毎秒1000トンを超えて(7日6時32分ごろ)から、再び、その放流量に戻る9時までの2時間28分間でした。

 実際の放流では、6時40分から7時10分までの30分間において毎秒1400トン台が維持されています。

 これは、流入量が若干減り始めたことで取られた処置と思われますが、実際のところは、どうだったのか?

 当事者ではないことから、詳しくは、よくわかりません。

 しかし、その後は再びダムへの流入量が増えてきたので、さらに放流量を増やし、7時40分の時点で毎秒1783トンを記録しています。

 まことに異常な放流量であることは間違いありません。

 ここで、報道では、「通常の放流量の6倍もの放流がなされた」と指摘されていました。

 調節放流量毎秒300トンを基準にすれば、この最大放流量はたしかに6倍以上になります。

 しかし、6倍と聞かされても、「そんなにたくさん流したのか」と驚くだけで、それ以上の判断はできません。

 正確に報道していただくとすれば、「計画最大放流量の1.8倍近くを放流した」とされた方がよいでしょう。

 すでに述べてきたように、計画最大放流量とな、氾濫を起こさずに流すことができる最大の放流量のことですから、その1.8倍も流したのか、と理解することができます。

 流してはいけない流量を2時間半も流し続けた、これでは、下流で氾濫が起こり、犠牲者が出るのを避けることはできません。

 前回の記事において紹介した2つの時計が止まっていた時刻は、7時4分と7時24分ごろでしたので、それは、この最大放流量毎秒1797トンに向かうころに発生した洪水現象でした。

 約20分間で水深が2m以上も増加したという住民の証言とぴたり一致し、まさに「時計は洪水の様子を表していた」ことになります。

 さて、ここでもう一つ重要な考察を行っておきましょう。

 先ほどから、計画最大放流量の話をしていますが、これは下流の堤防を越流しないで流せる最大の放流量のことを意味しています。

 ここまでは流して大丈夫という量なので、当然のことながら、それ以上を流すと、水は堤防を越流して氾濫が起こり、被害が発生するということになります。

 そこで、その数値を確かめるために、下記にそれを示します。

 計画最大放流量   毎秒1000トン

 実際の最大放流量  毎秒1797トン

 この比をとると、それは1.8倍になります。

 これは、越流しないぎりぎりの水位よりも1.8倍を流したことを意味します。

 これを「止むを得ない」処置であったというのであれば、、それはあまりにも「お粗末なこと」といわざるをえません。

 この「お粗末な判断」は、ダムへの流入増加が起こり始めた時点で、調節放流から予備放流に切り替えなかったことから起こったのであり、ここに配慮がなかった第1の問題があります。

 その第2の問題は、ダムが満杯になった後も、40分間もの長きにわたって調節放流をし続けて、満杯を上乗せしていたことにあります。

 仮に百歩譲って、この満水時点で、ダムへの流入量をそのまま放流することを始めていたら、かなりの洪水調節が可能になったでしょう。

 次回は、その点についてより詳しく分け入ることにしましょう(つづく)。

mari-go-rudo0717
 マリーゴールド(大成研究所の前庭にて)