丁度同じテーマでしたので、今回から、何回かに分けて、日本高専学会に提出した原稿「今世紀における『小さくない地場産業』づくり」を掲載します。


1.はじめに

世界的規模の激動が始まり,産業革命以来の大転換起ころうとしている.

わが国では,1970年代に国民総生産(GDP)において世界第二位を達し,その後は「奇跡の30年」と呼ばれている.

しかし,その後は「失われた10年」,「20年」、さらには「30年」とまでいわれるようになった.

この間,わが国の製造業における国民総生産(GDP)は,主要3分野である「電気機械」,「輸送用機械」,「機械一般」のいずれにおいても減少し,とくに最前者においては,1990年のピークの半減に近い値にまで落ち込むようになった1

これには、「グローバリゼイション」の名のもとに繰り広げられた「国内産業の空洞化」と「地方の衰退」が深く関係している.

大企業における不祥事と不振に伴う大規模なリストラ,地方における工場閉鎖,失業,中小企業の衰退,第1次産業の不振、少子高齢化,人口減などによって,地方はますます危機的状況を深めている。

 このような状況のなかで,「製造業の再構築」および「地方の再生」問題が,より鋭く問われるようになった.

これらの問題を解決するには,国民の生活と産業を根本的に変革することを可能とする「革新的技術の開発」および地方における「小さくない地場産業づくり」が重要である.

 本論では、これらの課題を究明するとともに,そのなかでの高専の果たすべき役割を検討する.


2.「小さくない地場産業」の必要性

 地場産業とは,地域・産業資源を活かした中小企業群が集中的に立地している産業のことである.

 古くは,三重県における真珠養殖、愛知県における織機および自動車、沖縄県の泡盛などが典型的である。

 ここでいう「小さくない」とは,文字通りの中規模以上の集積と裾野を有することを意味しており、その産業づくりの必要性を詳しく考察する.

(1) 今世紀初頭に直面している重大問題

歴史研究者の磯田道史は,今世紀の初頭において直面する重大問題として次の3つを指摘している2


a)少子高齢化の振興と人口減少

b)国の借金の天文学的増大,AI技術の進展に伴う格差拡大

c)南海・東南海自身の連動による太平洋ベルト地帯の破壊後の復旧に要する膨大な資金と経済悪化


かれは,この国難ともいえる事態に備えて,今から,その対策を準備すべきであることを強調した.

とくに,AI技術を主導するのは,わが国ではなく,アメリカと中国であることを明らかにし,これによって富の偏在が起こり,ますます格差が進むことを警告している.

これでは,先の「インターネット経済のバブル」によって創造的破壊を受けた「わが国」は,このAI新経済によって,再び,その新たな破壊に耐え忍ぶことになることから,それを止揚する抜本的な打開策を見出すことが重要になる.


(つづく)。
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ムラサキカタバミ