今回から3回に分けて、先日、日本高専学会に登校した年会原稿を報告しておきましょう。

 なかなか大きなテーマでしたので、どう「人づくり」の問題に集約させていくかで、あれこれと思案が必要でした。

 おかげでよい勉強になりました。

 また、問題提起の第一歩になれたのではないかと思います。
 

1.はじめに

 

この30年,わが国における製造業の国民総生産(GDP)は減少の一途をたどっている.

その原因は,主要三分野と呼ばれてきた「電気機械」,「輸送用機械」,「機械一般」のいずれにおいてもGDPが減少したことにあり,とくにその最前者において,1990年時のピークと比して半減に近いところまでの落ち込みが大きな原因となっている.

この落ち込みのなかで,2010年には,かつては断トツの首位を占めていた電気機械が,食料品に抜かれるという事態に陥った.

この現象を根拠にして,わが国は「ハイテクの国」から「ローテクの国」になったという指摘がなされるまでになった1

このような後退を前にして,製造業の再生問題が国民的課題として浮上してきている.

周知のように,高専は,製造業の主要分野に数多くの卒業生を送り出してきた.

また,その実績を拠り所として,その教育の目標を確立してきた.

それゆえに,高専には,その製造業の再生を担う人々の養成機関としての役割を果たす必要が新たに生まれ始めている.

本論では,製造業の再生を担う人々としての高専生,高専教員などの課題と役割を明らかにする.

 

2.製造業の再生問題

 

 歴史家の磯田道史2)がいう「奇跡の30年」の象徴は,GDPにおいて世界第2位を占めていたことにあった.

 これは,朝鮮戦争特需に続く高度成長によって準備され,電気電子機械と自動車が日本経済のエンジンとなって牽引したからであった.

 しかし,その30年が終わり,「失われた10年~30年」のなかで製造業の再生問題が問われるようになった.

 周知のように,この問題解決は容易ではない.

 そのGDP減少の誘因は,その産業の空洞化にあり,この事態は,さらに深刻化する恐れすらある.

 たとえば,自動車の生産においては,現在の国内生産分は,それは全体の10数パーセントでしかなくなっている.

 その国内からの自動車の輸出が石油などのエネルギーの輸入額と同じであり,前者の急減は,この貿易収支をたちどころに悪化させることに結びつく.

 この状況を踏まえると,その再生の役割は,国内の地域に根ざした圧倒的多数の中小企業群などが担うしかなく,ここへの集中的傾注が重要である(つづく)。


hetima
ヘチマの若葉(大成研究所前庭にて)