議論は、次の2つの意見に分かれて進んでいきました。

 ①いかにして、出産年齢の女性の地元への定着を図るか。

 ②いかにして、出産年齢の女性を流入できるようにするのか。

 ①に関しては、これまでにもいろいろな施策がなされてきていますが、その歯止めができないまま、ずるずると人口減少が続く事態となっています。

 地元には、若い女性が大量に雇用される企業がなく、かといって、時代をリードできるようなベンチャービジネス企業の創出もなく、そして、地元の農漁業、中小企業、サービス産業においても、その雇用を生み出すほどに十分な勢いはありません。

 また、②に関しても、これまでにさまざまな試みはなされてきたものの、その困難を打開するほどの成功には至っていません。

 それでは、どうすればよいのか?

 「ここは思い切って、②の問題を徹底的に探究することが大切なのではないか!」

 「それは、具体的に、どうすればよいのですか?」

 「新たに、最初は小さな規模でよいから地場産業を創り、それを徐々に地域のみなさんと協力して発展させていく、そして中規模へ、さらには大規模にへと大きくしていくことではないかと思います」

 「どんな種類の地場産業がよいのでしょうか?」

 「国東の基幹産業は、何といっても農業が主ですから、それを基礎にした産業を育てることが重要だと思います」 

 「多くのみなさんが、これまでにも熱心に取り組まれてきていますが、大丈夫でしょうか?」

 「これまでと同じやり方ですと、おそらく、同じような結果しか得られないのではないでしょうか。ここには、その状況をブレイクスルー(突破)できるほどの知恵と工夫が必要になりますね」 

 「なるほど、・・・・」

 「おそらく、国東が抱えている問題は、全国の自治体が抱えているものと同じであり、この解決は、簡単ではありません。何かの秘策がないかぎり、それを打開することはできないでしょう」 

 「その秘策とは、どんなものですか?」
 
 「秘策といっても、神がかったものではありません。その第1は、その状況打開を可能とする新技術を開発することを可能とすることです」 

 「たとえば、それは、どのような技術なのですか?」

 「それは、自ずとわかるでしょう。かなりハイレベルで実践的な技術でないと地方では通用しないと思います。

 逆にいえば、地方に通用するほどのハイレベルの洗練された技術が求められているのだと思います。

 それに、責任を持って実際に育てていくという自前の姿勢が、とりわけ大切です」

 「なるほど、どこかから持ってきたもの、借り物ではだめなんですね」

 「その通りです。自分で実践的苦労を積み重ねたものでないと、実際の現場には通用しない、借り物だと、想定外のことが起こると、たちまち上手くいかなくなります。

この経験のなかで洗練された技術でないと、すぐに挫折してしまうことが多い、これではよくないですね」

 「その技術を用いて、どのようにして地場産業をつくるのですか?」
 
「よい質問ですね。

 まず、一番先に問われることは、その技術を適用して、それを成功に導くという、固い信念、それをどこまでも貫く、という姿勢を確立することが求められます。

 その次の段階は、小規模でもよいから、その技術を実践的に拡大し、その成功を徐々に積み重ねていくことです。

 これに関しては、大分県の耶馬渓における『青の洞門』という素敵な物語があります

 「青の洞門、といいますと?」

 「文豪菊池寛の小説『恩讐の彼方に』にある、その『青の洞門』のことです。今は、その主人公である禅海和尚の心境を学び、鑿と金づちでトンネルを掘り続けることが大切だと思っています」

 「これは、大変なことですね。すばらしい成功の裏には、血のにじむような努力の積み重ねがあるということでしょうか?」

 「そこまでのことはありませんが、ぶれずに、諦めずに根気よく続ける、これは簡単なようで意外と難しい、常人ではできないことなのかもしれませんね」

 「やはり、いろいろな失敗があったのですか?」

 「もちろんです。自然のなかですから思わぬことが起こります。

 たとえば、九分九厘上手くいっていたのに、最後のちょっとした判断ミスで、すべてダメになってしまう、これが二年続けて起きたこともありました。

 このような痛恨の出来事となると、その失敗を忘れてしまうことはできません。相当にショッキングなことでしたが、今では、とてもよい教訓を得たと思っています」

  「わかりました。その技術的な確立がなされた後は、どんな課題がありますか?」

  「まず、大切なことは、それを人任せにせず、それを実際の現場に適用できるように、実践的な成功を徐々に積み重ねていくことです。

 ここにも『粘り』が求められています。」

 「それは、どんな粘りなのですか?」

 「そうですね、たとえば、1+1は2ですよね。次は、2+2は4です。

 その目標を1000としますと、これは、ほんのわずかな進歩でしかありません。

 2とか4に達しても、1000には到底及びませんので、ここで焦って、それを一挙に20、50へと拡大しようとすると問題が次々に起こってしまいます。

 まず、お金が必要になり、その確保が優先されるようになります。

 人的なパワー不足にもなり、この改善にも大変な労力を払うことになります。

 これらを考慮しながら、地域の人々と連携し、さまざまな協力を発展させる、これが、次の段階における課題です。

 これは、なかなか容易ではない構想ですが、それを何とか地場産業にして発展させ、そこに若い男女の方々が参画できるようなると、やがて、子供たちも増えて、人口減少が止まり、逆に増加に転ずる、このような近未来図を描いています」

 「それができると、すねらしい。ぜひとも、そうしたいですね」

 こうしてホットな議論を終えることができました。

 また、この話題を第35回マイクロバブル研究会においても提供することになりました。

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                      キンセンカ