このところ数日間、非常に重要な来客者を迎え、少々興奮気味の時を過ごしています。

 これらの人々との会話や討議を行うことで、日ごろは、あまり使わない脳刺激が促されたのでしょうか。

 そのお客さんが帰られた後も、脳内に一種の覚醒感が残っており、そのために床に就いても眠気が出てこないことがしばしば起きています。

 心も頭も動かされるとは、このようなことをいうのかもしれませんね。

 本日は、その覚醒をもたらす、心の動きを垣間見ることにしましょう。

 その第1は、現場の第一線で仕事をなさっている方との対話の結果です。

 大勢の方々と毎日触れ合いながら仕事をされているだけあって、その言動には適格性と明瞭性が満ち溢れていました。

 また、私が非常に貴重だと思ったのは、その第一線の職場において最も困っている問題が鋭く指摘されたことでした。

 これを直に聞かされ、「確かに、その通りだ」と思いました。

 発明は「必要の母」とよくいわれますが、それは、豊田佐吉が自動織機を発明した際の強力な動機でした。

 佐吉のお母さんは、家計を支えるために毎夜、手動の織機で内職をしていました。

 その母を毎夜眺めながら、なんとか、母の重労働を軽減させてやりたい、こう思って自動織機を開発しました。

 その際、佐吉の発明によって母の労働が楽になったのを目の当たりにし、「これは母だけなく、多くの織手の軽減にも結び付くであろう」と確信することができたでしょう。

 その佐吉の確信は正しかったのですが、その技術の導入依頼は、かれの予想をはるかに超えて、海の向こうのイギリスからなされたのでした。

 「あなたの特許を買いたい、売ってください」

 これが、当時の豊田織機の財政的基礎になり、そこから、後に自動車産業を生み出す原動力が形成されることになりました。

 母を助けることが、より多くの人々を助けることに結びつき、それが花開いていくという起業を成し遂げっていったのです。

 現場には、常に解決したい困難があり、それを解決していくことができれば、それが同じような困難を有する人々にも役立ち、さらにそれが確立されることによって普遍化され、より広範囲に及んでいく、これが技術の発展の重要な特徴ということができるでしょう。

 最近は、この困難の実態がなかなかわかり辛くなっていますので、それこそ、その現場の声を知り、その問題の本質を理解することはとても重要なことといえます。

 「そうか、そこが問題だったのか」

 それを実感できると、

 「どうすれば解決できるのか?


 こう思うようになり、その知的探索が頭のなかで始まります。

 時あるごとに考え、それがおぼろげにも少々明らかになると、さらに考え、それを繰り返すことで、その実像が鮮明になっていくようです。

 これは、ある意味で「思考実験」ともいうべき行為であり、これが原点になって、新たな概念やアイデアが髣髴と湧いてくるのではないかと思います。

 そして、その思考はさらに現実化され、より具体的なものづくりへと変化していくのではないでしょうか。

 この、いわば困難解決型の思考の流れ、これを具体的に試してみる価値はありそうですね。

 その第2は、新たな知見を得ることによって、それまでの謎やもやもやが一気に解け始めることがあることです。

 これは、ある大学教授が私の前で丁寧にプレンテーションをしていただいたことで誘起されることになりました。

 「そうか、そうだったのか!」

 思わず、自分の手で膝を強く叩きたくなる、そうです、その気分です。

 これについて詳しく語るとすれば、相当に長くなりそうなので、本日は、その予告に留めておきましょう。

 私にとってのこの数日間は、知的興奮の坩堝(るつぼ)なかにいるようで、とてもゆかいですね(つづく)。

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大成研究所の前庭に咲いた白紫の花