気液二相の高速旋回によって、装置内の液体と気体の遠向心分離を引き起こさせ、その装置内の回転軸に沿って旋回空洞部を形成させる、ここまでは改良できたのですが、これでマイクロバブルを発生させることはできませんでした。

 何が不足していたのか?

 それは、次のステップに進むことで徐々に明らかになりました。

 ①最初に見た旋回空洞部の直径は数㎜でした。これはいわば数ミリの直径を有する空気の
 塊のようなものですから、これからマイクロバブルが生まれだすことはありません。

  しかし、この旋回空洞部(竜巻によく似た現象)の直径を、供給する空気の量を調節す
 ることで、ある程度制御できることが解ってきました。
  空気を絞れば、その直径が小さくなる、おそらく旋回空洞部の回転速度も大きくなっ
 て、気液界面におけるせん断力も、より大きくなっていることが推察できました。
  この旋回気体空洞部の制御がある程度可能になったことは重要な進歩ではありました
 が、ここからマイクロバブルを大量発生させるには、もう一つの新たな工夫が必要でし 
 た。

 ②旋回速度が足りない、気体と液体を等分にして挿入するのでは、この旋回速度を増やす
 ことができませんでした。

  周知のように、液体と気体を混合して同時に流しますと、気体には浮力があり、水の流
 れを低減させようとする力が働きます。
  せっかく、水流における噴出速度を増加させようとしても、そこに気体が噴き出してく
 ると、その流れの勢いを低減、あるいは緩和させようとする力が働きます。
  これでは速く回そうとしても、すなわち、高速旋回から超高速旋回へ向かうことをめざ
 しても互いに打ち消し合って、それが実現できなくなってしまいます。

  どうすれば、その超高速旋回への移行を実現できるのか?
  これも、当時としては小さくない難問でした。

 こうなると、あれこれと試行錯誤を繰り返すしかありません。

 「ああしたらどうか、こうしたらどうか。いやこうしよう」

 またしても、改良を重ねる日々が続くことになりました。

 こうしているうちに、私のドイツ・アメリカへの海外留学の日がやってきてしまい、その開発は中断を余儀なくされてしまいました。

 また、その間も、スタッフには継続して実験を行うように依頼していましたので、その更なる試行錯誤が繰り返されたようでした。

 帰国後、その開発を再開しました。

 この間、実験中に偶然、その装置の出口を手で塞いだことがことがあったそうで、そのために、旋回気体空洞部が装置の下部から出ざるを得なくなり、それによって微細気泡の出具合が変化したという報告があり、まずは、その確認から行いました。

 この確認を行いながら、そこで旋回気体空洞部を変形させることで、気泡の微細化が可能であることを理解しました。

 この偶然のブレイクスルーをさらに発展させ、旋回気体空洞部の変形、すなわち、上下流における旋回気体の速度差による切断、粉砕という新たな科学的概念を生み出すことになりました。

 残った課題は、その切断・粉砕をよりスムースに行うか、ここでも装置内の形状を工夫し結果的に「M1型(4孔噴出タイプ)」と「M2型(1孔噴出タイプ)」と呼ばれる現在の光マイクロバブル発生装置ができあがりました。


 なお、もう一つの課題であった超高速旋回を可能にすることは、次の工夫で実現可能になりました。

 ①旋回気体空洞部では負圧が形成されるので、その上部に気体導入口を設け、そこから外部気体を吸入し、その吸入量をコックで制御すればよい。

 ②この吸入量を少なくすれば、旋回気体空洞部の旋回速度が大きくなり、同時にその空洞部が細くなってより細かい光マイクロバブルを発生するように調節できる。

 ③逆に吸入量を増やすと、光マイクロバブルは大きくなり、さらに、それを増やすと最後にはマクロバブルが発生する。

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淡水における空気光マイクロバブルの発生
 
 これらは、空気吸入量において最適値が存在することを示唆していましたので、今度は、最適吸入量を探究することが重要な課題となりました。

 最適値とは、ある目的が設定されて初めて成立するものです。

 単に、気泡を小さくすればよいと考えれば、吸入空気量をどんどん絞っていけばよいということになります。

 しかし、ここで注意しなければならないのは、その絞り込みによって、肝心のマイクロバブルの発生量が減少することになります。

 技術においては、それを適用する目的が必ずあります。

 その目的を達成するために、マイクロバブル技術を工夫して適用するのですから、ただ、マイクロバブルが小さければよいというわけではありません。

 そこで、私たちは、光マイクロバブルによって最高レベルで生物の生理活性が起こることを、その目的とし、そのために最適の空気吸入量を毎分1リットルとすることにしました。

 もちろん、使用目的が異なるとこの空気量の調節は微妙に変えてもよいので、その都度現場で最適な対応をしています。

 以上のように、光マイクロバブル発生装置においては、10数個のアイデアと工夫、問題解決が散りばめられていますので、容易にでき上ったものではなかったことを示しておきます。

 これで最初のエピソードを終えることにします(
つづく)。

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             散歩で見つけた黄色い花