ドラマ『オクニョ』は、毎週日曜日の夜9時から10時までの1時間番組です。

 すでに述べてきたように60分番組ですから、45分番組に見慣れている私たちとっては、そろそろ終わりかなと思い始めるころに、逆にドラマが最高潮を迎え展開し始めます。

 これは私の「見ごたえ感」に大きな影響を与えています。

 近頃は、何事も「軽薄短小」になって、それでよいという風潮が蔓延していますが、それが、飽きやすい、冷めやすい、時間が過ぎれば忘れてしまうことなどを助長しているのではないでしょうか。

 さて、日曜日の夜に『オクニョ』を視た後は、どうしているかといいますと、毎日、その録画を見続けています。

 その熱心な視聴を見て、娘が呆れかえるほどです。

 その理由は、「ほかによりおもしろい番組がない」からで、これと同じことを家内からもいわれ、さらに、共に見続けるという具合になっています。

 ですから、次の日曜日までに同じ番組をほぼ7回見続けるということになります。

 これは、かの有名な「イチロー」流の鑑賞法であり、これれによって違った角度からの「視方」が可能になります。

 たとえば、主人公や監督の立場になって視るといいますか、さまざまなシーンの構成の在り様や人物の意図がどこにあったのかなどを考えることもできるようになります。

 これを今風にいえば、「深読み」ならぬ「深視る」とでもいうのでしょうか。

 そうすると同じ番組を1週間視続けても飽きないというか、かえっておもしろみが増してくることも少なくありません。

 観るたびに、「なるほどそうだったのか!」と思うシーンがいくつも出てきます。

 それだけ、ドラマに奥行きと深みがあるからでしょう。

 人間も、このようであり続けたいものですね。

 前置きがやや長くなりました。

 本日は、『ホジュン』ほかイ・ビョンフン監督のドラマに共通している、そして私の心に強く刻まれている「忍耐力」、「粘り強さ」、「ひたむきさ」、「決して諦めない」などの「精神力」と、それを支える「強靭な体力」について考えることにしましょう。

 ホジュンは、自分が妾の子どもであり、父の母に対する扱いを許すことができないことを理由に、ぐれてしまい、数々の悪さを行う青年として育っていました。

 賢さとともに体力にも優れていたので、今でいう「番長」格として君臨していました。

 しかし、こともあろうに国家の大罪である密貿易にまで手を出し、役人に捕まってしまいます。

 この時、母が役人の父親に泣いて頼み込み、かれは自分の職を辞すことと引き換えに、ホジュンの罪をなかったことにします。

 この身を賭しての父母の恩情に触れ、さすがのホジュンも心から自分を悔い改めるようになりました。

 さて、どう自分を改心するのか。

 これが大きな問題でした。

 そして、すでに名医として有名であった町医者のイ・ウィテイの門戸をたたくことにしました。

 しかし、この道は険しく、かれの前には、イ・ウィテの厳しい修行が待っていました。

 おまけに、すでに弟子希望の3人の先輩がいて、ホジュンは、かれらから執拗で過酷な「いじめ」を受けるようになります。

 この弟子たちの仕事は、野山で薬草を採取し、それを加工して薬にすることでしたが、ホジュンには、その仕事が任せられず、遠い道のりを経ての水汲み作業が与えられていました。

 ホジュンは、延々と続く、気の遠くなるような水汲みの作業が続けていきますが、イ・ウイテから、その水にはいくつもの種類があり、それぞれが医術において重要であり、それに重要な意味があることを教えられます。

 しかし、その一方で、弟子たちからは虐められ、嫌がらせを受けていたために、医学の勉強をすることはできませんでした。

 ここで、ホジュンの人間離れした修行が始まります。

 それは、昼間は医院で水汲みをし、夜は、山に登って、そこで医の修行をしていた超人的医師に実践的な医学を学ぶようになります。

 この場合、実践的な医学とは、鍼(はり)と動物の解剖(当時ヒトの解剖は許されていませんでした)のことでした。

 この修行によって、ホジュンは鍼の名手になっていきます。

 イ・ウイテも鍼の名手であり、かつては、王医と、その腕を競い合ったこともありました。

 その鍼の腕は、息子のイ・ドジに伝授されていましたので、この鍼の腕をめぐって、そのドジと数々の競い合いを行うようになり、その修行の成果が実るようになります。

 当時の医学とは、この鍼による身体改善と薬草づくりが主であり、ホジュンは、その鍼において、超人による直伝の修行で腕を磨くことができたのでした。

 こうなると、いくらいじめを受けても、その自信が、それを撥ねつけるようになります。

 いじめを受ければ受けるほど、それが奮発の梃子として働くようになり、糧にすらなっていったのです。

 夜も寝ずに勉強し、修行を重なる、これは若い時しかできないことですが、これをやり遂げることで、ホジュンは、ますます医学の道を邁進することになりました。

 このように医者としての修行を重ねていくホジュンの変貌を、名医イ・ウイテは注意深く観察し、新たな仕事を与えていきます。

 それが薬草探しであり、それを用いた薬づくりでした。

 その抜擢は、他の弟子たちにとって受け入れられないことであり、今度は、この薬草づくりをめぐっての「いじめ」の横行と、それへの反転攻勢で、物語はさらにおもしろくなります。

 それこそ、くどいほどのいじめにあっても、それを撥ね返すホジュンの姿を見続けることを、視聴者のみなさんがとても喜んだのでしょう。

 何事も、白黒を明確に付けたがる、そして徹底的に弾劾を行うことを選ぶ国民性といいましょうか、とにかく大統領さえ、その地位から引きずりおろしてしまうほどですから、わが国とは随分異なっています。

 昨今、わが国においては、小学校や大学誘致に関するスキャンダルがメディアをにぎわしていますが、これがお隣の国であれば、それこそトップの首が2、3人吹っ飛んでしまっていたに違いありません。

 このお国事情を参考にすれば、あいまいで、マイルド過ぎるのは、時としてあまりよくないことかもしれませんね。

 ちょっと話題が反れてしまいましたが、この執拗な虐めこそが、ホジュンの忍耐力と粘り強さ、そして反抗心を磨き上げて洗練化させていったのです。

 当然のことながら、血みどろになって鍛え上げられたホジュンと、いわばぬくぬくと親がかりで育ったイ・ドジとでは、医者としては、勝負ぬならないほどの力の差が生まれていきました。

 まともに真正面から闘うと必ず負けそうになるので、イ・ドジの方は権力と悪知恵でそれを補おうとします。

 次回は、その攻防におけるホジュンのエピソードを紹介することにしましょう
(つづく)。

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