前回に引き続き、トイレのドア問題に関する検討を行いました。 

  さて、問題点はドアの様式とトイレの便器の位置にありました。

 前者においては、特注の一枚吊戸にする(病院のドアは、すべてこの方式になっている)ことで、みなさんの意見が一致しました。

 この一枚戸を開くことで、WIC横の通路が遮断されてしまいますが、それは「仕方がないことにしよう」ということになりました。

 一枚の吊戸であれば、取っ手の配置を工夫すれば、車イスに座っての後ろ向きのままでも開け閉めはできるので、この開閉問題は解決できることになりました。

 上記5)については、「介護される側よりも、介護する側の方の意見の方が切実さ、親身さにおいて優れていて」、結局、便器の向きを、車イスで入ってきた方向から垂直方向に変えることで問題解決に向かうことになりました。

 最後は、家族みんなで協議を行い、この便器の向き変更案がよいとの結論に達し、それを大工さん、設計士に相談し、最終的な了解を得ることができました。

 また、このトイレに車イスで入って行く際に、寝室内を通行するためのスペースが必要であり、これもなんとか確保できることになりました。

 こうして、この喧々諤々の検討は解決に向かいましたが、その問題の根本は、トイレのスペースが狭かったことにあり、しかも、実際に車イスでの前もっての検討がなされていなかったことにありました。

 しかし、トイレをより広く確保すれば、お隣のWICや脱衣場が狭くなり、ひいては風呂のスペースに影響するという影響があり、そうなると、最初から設計を考え直さねばならないという問題にまで波及してしまいます。

 私どもが、この住居設計において、最も苦労したのは、マイクロバブル風呂をオープンにするという意図のもとで、リビングのすぐ隣に配置したことでした。

 また、できるだけ廊下の部分を少なくし、WICとトイレを寝室に近接させることにしました。

 風呂➡脱衣場➡WIC➡トイレ➡寝室➡私的書斎、この導線を見出し、確立するまでに何度もアイデアを出しては消し、最後に到達したのが、その流れでした。

 流れを逆にしますと、寝室(勉強に疲れたら、すぐにベッドで休憩する、これはドイツ人の住宅で学んだことであり、かれらの書斎には、簡易ベッドが置かれていました)➡トイレ(夜は、寝室からすぐに最短距離でトイレに行くことができ、その間に障害物はありません。

 寝室➡WIC(ここですぐに着替えることができます)。

 風呂➡脱衣場➡WIC(ここでもすぐに脱衣と着替えができます)

 大成研究所➡リビング➡風呂(外来者で入浴を希望される方の利用が可能になる)。

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 風呂(中央右)、WIC(右下)、トイレ(左下)、脱衣場(中央左)の各スペース

 それから、私が学んだもう一つの重要なことは、将来自分や家内が介護を受ける側になっときのことをよく想定して、それをユニバーサルデザインとして考え抜く必要があることでした。

 これは、自分のこととして、なかなか想定が難しかったのですが、このような現実問題に直面すると、その重要性がよく解ることになりました。

 その意味で、ユニバーサルデザイン、これは奥が深いですね。

 また、建築というものは、考えれば考えるほど良いアイデアが生まれてくるものだ、その考え抜くことを躊躇してはいけない、このような認識を深めることもでき、真にゆかいで幸いでした(つづく)。