「7月21付け琉球新報の1面トップ記事『平均寿命沖縄46位』は衝撃的でした。

 この中見出しは「死亡率減少幅は全国最低」とあり、この2つを合わせて考えると、比較的若い層の死亡率が急激に増えていることを示唆しているのだと思います」


 「これは真に衝撃的な低下率であり、その背後には、急激な生活習慣や食生活の変化が起こっていることを示唆しているのではないでしょうか」

 「これは、ややオーバーな言い方をすれば、沖縄県民の急激な健康と生活破壊が進んでいるのではないかと思います」

 そのことが気になって、過去の平均寿命の推移を調べてみましたが、以下の通りです。

 1975年   10位
 1985年    1位
 1995年    4位
 2000年  26位
 2005年  25位
 2010年  30位
 2015年  46位

 この数値からも明らかなように、本土に復帰して以降、沖縄県民の平均寿命は一桁台であったにもかかわらず、とりわけ1985年には全国一位になりながら、2000年には一気に26位にまで転落しています。

 これが、いわゆる「26ショック」と呼ばれている順位です。

 しかし、その2005年からの約10年間で、とうとうその順位は最下位近くにまで落ち込んでしまったのです。

 ここで、注目すべきことは、第1位を占めていた沖縄県が、30年間で46位という最下位に次ぐ順位にまで急激に転落していったことです。

 他府県において、このように、その順位が急激に落ち込んでいった事例はありません。

 たとえば、長野県は1985年で2位、1995年および2000年、2010年共に1位、2015年で3位と、安定した順位を保っています。

 また、2015年の最下位は青森県ですが、ここも1975年以来、その順位は変わっていません。

 「いったい、この沖縄では何が起きているのでしょうか?」

 「これは、みんなで調べ、究明していくべき問題ですね。
 何よりも大切なのは、命と生活ですから、その原因探究と有効な対策を明らかにする必要がありますね」

 K名誉教授は、カレーライスを2杯もお代わりしながら、こう呟きました。

 「ここで、おもしろいデータがあります。2010年における男性の野菜摂取量において、長寿の長野県が1位、沖縄県は45位となっています。

 この2010年は、沖縄県の平均寿命が30位に転落しています。この傾向ですと、現在は、その摂取量がもっと落ち込んでいるのではないでしょうか」

 「そうかもしれませんね・・・・・」

 「私の沖縄の親戚に、最近、憩室炎という病気で入院された方がいます。
 これは、炎症で腸の膜が薄くなり、最悪の場合は破裂してしまうという恐ろしい病気です。
 その彼に尋ねてみるとビールとお肉が大好物で、野菜はほとんど食べていなかったといっていました」

 「そういえば、沖縄県民は野菜を食べないということをテレビで特集していたのを見たことがあります。これは由々しきことですね」

 「私は、そうではないかと思って、スーパーの野菜売り場に何度も足を運んで、その特徴を調べてみました。
 そしたら、沖縄の野菜事情がかなり、浮き彫りになりました」


 「なるほど、それはどんな事情でしたか?」

 「はい、その第1は、沖縄県産の野菜が極端に少ないことでした。他府県からの輸入野菜と沖縄県産を比較するとおよそ9対1であり、たまに県産品が多い日でも8~7対2~3の割合でした」

 「そんなに違うのですか?」


 「先日、年配の女性に、この話をしたら、沖縄県産野菜が9対1の9の方ではないかと仰られていました。
 おそらく、そんなことは気にされずに野菜を買われているのだと思います」

 「そうでしょうね。思い当たるところがありますね」

 「他府県から入ってくる野菜が圧倒的に多い、これが沖縄県の野菜事情の第1の特徴です。

 当然のことながら、沖縄にお店頭に並ぶまでには時間がかかりますので、その野菜の新鮮味は、その分だけ低下してしまいます。

 先日、那覇市内のデパートの地下の野菜売り場を見学したことがありますが、いずれの野菜も新鮮さをかなり無くしていました」

 「それでは野菜の価値が落ちてしまいますね」

 「はい、そして沖縄の野菜の第2の特徴は、総じて値段が高いことです。私が住む大分県国東の地元のスーパーと比較しますと約2~3倍の価格で売られています」

 「新鮮味にやや乏しく、その上値段が高い。これでは、だれも買おうとはしませんね」

 「その通りです。
 沖縄の方々が野菜をあまり食べない、その理由は、自前で育てた新鮮な野菜が少なく、やむなく輸入された野菜を買おうとしても、それが高く、しかもやや新鮮さに欠けるという問題があるように思われます」

 「この問題を、どのようにして解決していくか、大きな問題ですね」

 「そうです。事は、沖縄県民の命と生活に結びつく問題ですので、これは重要な研究課題となりますね」

 こうして、二人の会話はどんどん進んでいきました。

 すでに、このピザレストランは昼時の混み合いが過ぎており、私たちも席を離れることにしました。

 おかげで、とことん話を尽くすことができ、なんとなく頭の中に澱んでいたもやもやがすっかり晴れたようでした


ーーー おかげで、沖縄の現実にやや深く分け入ることができたようだ!

 (つづく)。
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                        庭先のブーゲンビリア