先のアンモニアに関する研究開発最前線の話は、次の2点において注目を集めました。

 ①アンモニアの生成がアミノ酸合成という実用的問題に結びついて、これまでの費用、すなわち生成費と運搬費の大幅な削減をもたらすという実践的な課題解決の方法が見えてきた。

 ②
「C12A7エレクトライド」という触媒を用いれば、低温低圧下でのアンモニア生成が可能である。

 その実用化は2021年をめざすそうで、そこには、本触媒を用いてのアンモニア生成効率がどこまで効率的にアップできるのか、ここが重要な課題となるのではないかと思います。

 同時に、その低温、低圧が、どこまで下げられるのか、ここも重要な問題点となることでしょう。


 いずれにしても、次の「アンモニア社会」の実現に向けて、世の中は、ひたひたと走り始めたことはまちがいなさそうですね。

 
3つめの講演は、YO氏による「沖縄の食文化と製塩技術」でした。

 まず、かつては長寿日本一の県が、なぜ陥落していったのか、とくに、男性の寿命が26位にまで転落していったのか、これは沖縄県では「26ショック」といわれているそうで、これらが話題になりました。

 YO氏によれば、この背後には、沖縄県民の食文化の変化が関係しており、とくに野菜を食べなくなったことが大きな原因であることが示されました。

 たしかに、沖縄では野菜を食べない方々が多く、そのために腸が破裂しやすいという特殊な病気が起こるそうで、つい最近も親戚の50歳代の男性が、この病気で入院していました。

 野菜を食べずに、肉を食べる、ビールを好んで多く飲む、この方も、このような傾向にありました。

 たしかに、野菜摂取率については、男性において全国的に下から2番目という数値があるようで、それを見せられて、みなさん「なるほど」と納得されていました。

 この問題は、次の農業の不振問題と結びついています。

 ①沖縄県内で野菜の生産が不十分であり、他県から輸入する必要がある。その輸送には時間と費用が必要になるので、新鮮度が落ち、費用も割高になる。

 ②沖縄の気候に則した野菜作りが実現していない。周知のように、沖縄は亜熱帯の気候であり、それを十二分に生かした技術的ブレイクスルーが実現されていない。

 ③一方で、サトウキビの生産は、この2、3年で1000億円を突破し、徐々に増えて最高時に迫る勢いである。このサトウキビは、ほとんど何もせずに育つことから、これがある限り沖縄の農業は発展しないという見解もある。

 ①については、沖縄の中部を中心にスーパーを展開されている店に行って見学しましたが、たしかに、県産の野菜は少なく、圧倒的多数の野菜が他府県から運ばれて店頭に並べられていました。

 たしかに、その価格も、こちら(国東)と比較すると割高であり、これらがよく売れている様子はありませんでした。

 また、那覇市内のデパートの地下売り場も見学したことがありますが、ここはもっと価格が高く、そして相当な量の野菜が売れ残ったままでした。

 ここからは、沖縄の農業、流通、そして命と健康に関する深刻な問題が垣間見えてきますね。

 この①の問題を踏まえますと、②の課題は非常に重要ではないかと思います。

 この②の課題を解決することで、③の問題も自然に解消されていくことでしょう。

 沖縄の野菜摂取問題の次に、沖縄の美味しい食品が紹介されました。

 その第1は、「島ラッキョ」でした。沖縄では、これを生で、醤油と鰹節をかけて食べるのが一般的ですが、先日は天ぷらで出されてきましたので、このおいしさには感激しました。
 
 噛むと独特の香りがし、良い味がし、辛みもありませんので、この初夏の旬の食べ物として喜ばれています。

 第2は、「ムーチー」という米で作った餅菓子のことです。よい香りのする月桃の葉で餅を包み、昔は、こちらの端午の節句と同様に、軒に吊して男の子の成長を祝う食物だったそうです。

 今では、常時、スーパーの店頭に並ぶようになり、その味も多様になってきました。

 この餅は、日数が経過すると硬くなりますが、電子レンジにかけるとすぐに柔らくなりますので、内地の餅と異なって、それが食べやすいことが好まれている理由の一つとなっています。

 第3は、「スーチカー」です。豚のロースを塩漬けにし、それを湯がいた豚肉をこのように呼んでいて、琉球の宮廷料理の一つだったのではないかと思います。

 とくに、湯がいた直後の熱々の状態が美味しく、私は、これが沖縄料理の最高傑作ではないかと思い続けている逸品です。

 このスーチカーは泡盛との相性がよく、沖縄の庶民に愛されている組み合わせということができるでしょう。

 この3大食物についても話が大いに盛り上がり、予定の時間が瞬く間に過ぎてしまいました。

 4つ目の話題は、前回に引き続いて、「パンづくり」についてでした。

 今回は、パンの酵母づくり、生地づくりにおいて、弱酸性の水がよいといわれている意味について突っ込んだ議論がなされました。

 また、マイクロバブル水を用いることが、これらの傾向とどう関係するのか、この点にも議論が展開しましたが、結論としては、きちんとしたマイクロバブル水に関する基礎実験を行い、その結果を踏まえてパン作りにおける弱酸性問題を検討する必要があることが明らかにされました。

 こうして、今回も、予定の3時間があっという間に経過し、みなさんの興味を刺激する学習会となりました。

 次回は、次の日程で第6回が開催されることになりました。

 第6回ナノプラネットゼミ
 日時:2017年8月19日(土)09:00~12:00
 場所:(株)ナノプラネット研究所会議室

(つづく)。

miyagisima
            沖縄宮城島の果報バンタ(幸せの岬)から東の海と空を望む