昨日は、朝の9時半から午後の3時半まで、外国から来られた、ある若い訪問者との協議を丁寧に行っていました。

 その日は、そのために3時半ぐらいに起きて資料作りを開始しました。

 これまでの実験結果を整理し、プレゼン用のスライドづくりを行いました。

 また、協議のためのその他の3テーマと課題も示すことにしました。

 かれの大分空港への到着が9時30分、その時刻まで少し猶予があったので、マイクロバブル入浴で元気回復をめざしました。

 これは毎度のことなのですが、この入浴によって体力的にも意欲においても支えられることが多く、私にとっては「なくてなならないもの」ということができます。

 さて、かれの訪問は、今回で6、7回でしょうか。すっかり親しい仲になり、互いに信頼して話を進めることができるようになりました。

 最初の「きっかけ」は、ここ国東にきてすぐのころに訪問を受けたことからでした。

 その折に、拙著『マイクロバブルのすべて』にぎっしりと付箋が張られ、しかも、それこそ綿密に傍線が引かれていたことでした。

ーーー こんなに私の著書を熱心に、そして詳しく読み込まれていたのか!

 それを垣間見て、この方のマイクロバブルに寄せる関心は「尋常ではない」と思ったしだいでした。

 以来、日本に来られては、互いの問題意識や課題を語り合い、マイクロバブル技術にかける思いや狙いに関する協議を深めてきました。

 そして、そのことがいよいよ煮詰まってきたからでしょうか、インターネット通訳を介しての検討が、私のプレゼンを基本にして開始されました。

 最初のテーマは、南国地方特有の水環境問題に関することでした。

 日本では四季があり、この水環境の悪化問題は一夏の出来事で終わってしまうことが多いのですが、これが常夏の国では、そういうわけにはいきません。

 おまけに、汚濁や汚染水が垂れ流しのところが多く、それが貯水池や川、そして海に流れ出てしまいます。

 ご周知のように、太陽の光、酸素、そして栄養がそろうと、植物プランクトンの異常発生が起こり、それが貯水池の底に堆積し、その下層に無酸素水域を形成させます。

 そして、この下層の無酸素水域に周囲の底部からの各種の金属イオンが溶出し、さらに水質の悪化を進行させます。

 時々台風や豪雨がやってきて貯水池全体を急激にかき混ぜると、その汚れた無酸素水や金属イオンが上がってきて、それらが飲み水に混ざるという好ましくないことも起こります。

 じつは、初期の頃のマイクロバブル技術研究においては、この貯水池の浄化をどう行うかが重要なテーマの一つとなっていました。

 よく、その現場に出かけては、装置の設置に汗をかき、そして調査を繰り返してきたことを思い出します。

 今、この過程を振り返りますと、その調査研究とともに、装置の改良もかなり進んできました。

 その流れは、大型装置から小型化へ、コンパクト化、軽量化でした。

 とくに、2011年の東日本大震災の復興支援プログラムにおいては、装置を人力で運び、小型ボートのような船で設置できるように装置を工夫し、改良したことが重要な転機になりました。

 そして、この経験は、小規模な対象池には、それに適切な装置を、また、大規模な対象池には、それらを組み合わせることで装置化を工夫するという方式が確立していくことに繫がっていきました。

 具体的には、岩手県大船渡湾においては、4つの小型水中ポンプを用いて合計で104機のマイクロバブル発生装置を用いてマイクロバブルを大量発生させ、カキの養殖改善に役立ちました。

 この閉鎖水域における水環境の改善に関するプロジェクトは、現在もなお、いくつかが進行中であり、その都度、現場に則した改善がなされています。

 さて、そのかれの国においては、かれにいわせれば「無茶苦茶」な水事情だそうで、「なんとか改善してほしい」と、多くの人々が念願しているそうです。

 かれも、その「切なる一人」であり、その改善に関する検討をより深めることになりました。

 そこで、私どもの研究成果を明らかにし、そこへのマイクロバブル技術の適用に関する特徴と利点を示しました。

 かれのアプローチの背景には、その基本に私どもが取り組んできた一連の研究があり、その導入で、何とか解決できないかという熱い思いがあり、私も、その思いを真正面から受け留めて、前向きに尽力する必要があるように思いました。

 ところで、技術の目的は何か、それは人々の生活や産業、そして環境を改善し豊かにするためにあります。

 その目的は、それを切に求めている人々のために達成されることが好ましく、一部の人々の利潤のためにあるのではありません。

 「そこに求めている人がいれば、自ら赴いて、その人の話を聞き」という宮沢賢治の意思に繫がっていくことこそが、技術に携わる人々の本懐といってもよいでしょう。

 かれの持ち込んだ課題は、日本よりも、数段深刻な南の国においてこそ解決されるべきものであり、それこそ、マイクロバブル技術にとっても、まさに重要な本懐ということができるでしょう。

 お昼のご飯は、国東の海の幸が出され、今朝の市場では鯒(こち)が一番良かったとのことで、その刺身とみそ汁が出されました。

 やはり、新鮮な状態でしたので、刺身の味も抜群、それから何といっても、鯒のみそ汁は天下一品でした。

 午後からは、共同の研究開発課題、私どもが提案した2課題、さらには、それらの受容と導入問題などについての意見交換や協議がなされました。

 こうして、午前中の3時間、午後の2時間が、あっという間に過ぎ、帰りの飛行機の時刻となりました。

 もともと技術には国境がなく、優れた技術ほど、難なく、それを乗り越えていくものです。

 これから、マイクロバブル技術が、21世紀の未来を、国境を越えながら切り拓いていくことになるでしょう。
梨花
梨の花