マイクロバブルの収縮運動における振動現象を解説する前に、もう一つ重要な特性を述べておきましょう。

 それは、マイクロバブルの発生直後から液体中で消失する(おそらく直径が1㎛以下になると普通の顕微鏡においても容易に見えなくなる)までの時間を「マイクロバブルの寿命」としますと、それが非常に短いことです。

 この場合、「非常に短い」とは、「数十秒」という長さであり、より具体的にいえば、およそ「50秒前後」ともいってよいでしょう。

 じつは、この寿命の短さが、マイクロバブルの収縮運動とその最終過程である消失と溶解現象に深く関与している可能性があります。

 そのことは、後ほど詳しく触れたいと思いますが、その前に、寿命のより長いマイクロバブルのことについても述べておきましょう。

 ある研究者の観測によれば、その寿命時間(発生から消失まで)が数分から10分前後と非常に長いという結果の報告もありました。

 それは、顕微鏡を用いて観測され、マイクロバブルは、プレパラートの上にガラス板を置き、その間にマイクロバブルを含む液体を注入し、そのガラス板の上から顕微鏡を覗いて、マイクロバブルの時間変化を追うというものでした。

 マイクロバブルは、上下のガラス板の間に挟まれた液体中に発生しており、そのマイクロバブルの特徴は、その発生した位置が変わらないものでした。
 
 それゆえ、固定された顕微鏡でも観測でき、それが見えなくなるまでの時間を計って寿命時間とされたようでした。

 ここで、私どもの観測方法(マイクロスコープ方式)とこのプレパラート顕微鏡方式を比較してみましょう。

                 マイクロスコープ方式   プレパラート顕微鏡方式              
 チャネルの隙間間隔          1㎜          0.1~0.05㎜

 マイクロバブルの挙動       上昇する        上昇できない

 マイクロバブルの振動        確認            未確認

 寿命時間                数十秒           数分以上

 この寿命時間の相違は、当然のことながらマイクロバブルの発生方式に依存していますが、そのことは、ここでは言及しないでおきましょう。

 さて、このマイクロバブルの寿命時間が違う理由は、どこにあるのでしょうか。

 私は、この大きな相違の原因は、「マイクロバブルの振動現象の有無あるいは相違」にあるのではないかと思います。

 マイクロバブルが振動しているとすれば、その収縮および膨張の度に、気液界面での摩擦現象が発生し、それに伴って他の物的作用も加わって(このことについても後に詳述する予定)、マイクロバブル内部の気体が溶解しやすくなるのではないかと考えています。

 この気体溶解が進めば、自ずとマイクロバブル収縮速度も増加し、その寿命はより短くなります。
mBjumyou
                マイクロバブルの振動有無と寿命時間の相違

 このように振動の有無によって、それぞれのマイクロバブルの寿命時間が大きく変わってくることは明らかなことではないでしょうか。

 「マイクロバブルの収縮運動における振動現象は、その溶解速度の大小に関係している」

 ちょっと寄り道をしてしまいましたが、次回は、この振動現象により深く分け入ることにしましょう(つづく)。