「第11回マイクロバブル技術国東セミナーを終えて(2)」を書き進めているうちに、その内容が、本シリーズのものとよく似てきたことから、その(3)を、本主題のシリーズに合流させることにしました。

 読者のみなさまにおかれましては、この変更に関するご理解をよろしくお願いいたします。

 さて、前回の記事においては、マイクロバブルの6つの特徴を示し、それをより詳しく解説していく予定でした。

 基本的には、この流れに沿って書き進めることにしますが、これからは、せっかくのセミナーで用いたテキストがありますので、これを踏まえて、より詳しく、そしてより系統的に、さらによりやさしく明察していく予定です。

 そこで、その第1の特徴を再記しておきましょう。

 「マイクロバブルは常に変化し、マイクロナノバブル、ナノバブルへ収縮していくという動的挙動を有している、一時として、自らの形態や中身を維持することはなく変化をし続ける運動様式を有している」

 この泡に関する優れた観察が、古くは鴨長明の『方丈記』おいて、次のように示されています。

 「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。

 よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 世の中にある人とすみかと、またかくの如し。

 玉しきの都の中にむねをならべいらかをあらそへる、たかきいやしき人のすまひは、代々を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。

 或はこぞ破れ(やけイ)てことしは造り、あるは大家ほろびて小家となる。

 住む人もこれにおなじ。

 所もかはらず、人も多かれど、いにしへ見し人は、二三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。
あしたに死し、ゆふべに生るゝならひ、たゞ水の泡にぞ似たりける。

 知らず、生れ死ぬる人、いづかたより來りて、いづかたへか去る。又知らず、かりのやどり、誰が爲に心を惱まし、何によりてか目をよろこばしむる。

 そのあるじとすみかと、無常をあらそひ去るさま、いはゞ朝顏の露にことならず。

 或は露おちて花のこれり。

 のこるといへども朝日に枯れぬ。

 或は花はしぼみて、露なほ消えず。

 消えずといへども、ゆふべを待つことなし。

 およそ物の心を知れりしよりこのかた、四十あまりの春秋をおくれる間に、世のふしぎを見ることやゝたびたびになりぬ」

 やや長くなりましたが、ここには、著者の世の中に対する鋭い観方が、泡(うたかた)の生消にたとえられて巧みに表現されています。

 この冒頭の一説を、私なりに解釈しますと、「川は下に向かって流れ続け、そこに浮かぶ泡(うたかた)は、常に消えては生まれ、互いに合体しながら、久しく留まることがない」、ここに、その特徴があるように思われます。

 長明の、この優れた直観にあるように、「泡は常に変化し、そして互いに反応し合っている」のです。

 しかも、かれの鋭い洞察は、その泡の生消を、いわば栄枯盛衰を人の家や花の移ろいにまで準えています。

 大家が滅びて小家になる、住む人の数も変わると述べられていますが、これを現代に則して観ると、それは次の事例にぴたりと当てはまります。

 電機メーカーとしては老舗のT社が瀕死の状態に陥っています。

 アメリカの原発製造会社を傘下に入れたことで躓き、さらに、その会社の子会社に莫大な借金があることが明らかになりました。

 ある著名な経済ジャーナリストは、「T社は、トランプの『ババ』を掴まされた」といっていました。

 しかし、その「ババ」だけではなく、大きな意味で、この会社は、基本的な技術戦略において本来の道を歩もうとはしなかったのだと思います。

 今後は、最も有力な半導体部分を売り出し、しかも原発部分では赤字を続け、残るは社会インフラのみという報道がなされていましたが、本当に、それでよいのでしょうか。

 長明のいう、「大家が小家に転落していく」姿が、ここにあります。

 このT社に関して、ある著名な経済学者は、「すでに実質は倒産している。19万人を超える従業員のこれからが心配だ!」とラジオ番組の中で強調されていましたが、事態は深刻な状況のようです。

 しかも、この危機的状況は、T社のみならず、同じ電機メーカー大手のH社、さらには、重電機メーカーのM社においても原発がらみの深刻な問題が発生しているというのですから、これは容易ならざる事態を迎えているといってよいでしょう。

 ちょっと前まで、誰が、このような事態を予測できたでしょうか。

 生まれては消え、できては消えは、長明の「泡沫(うたかた)」の表現にあるように、はかないものですが、これが何万、何十万の方々と関係しているのですから、これを看過できないのは当然のことです。 

 これらの事態を克服し、今の状況から脱していくには、しっかりした技術戦略を確立し、小さくてもよいから新たなイノベーションを連続的に発生させて、衰退に向かう日本の製造業を再生させる必要があります。

 さて、話がやや反れてしまいましたので、本題に戻ることにしましょう。

 「マイクロバブルは常に変化し、収縮していく」、しかし、「中には反対に、収縮に向かうのではなく膨張していくマイクロバブルがある」

 これらの現象をどう整理していけばよいのでしょうか。

 この説明において出されたスライドが下記のものでした。



 マイクロバブルは、その大きさにおいて65㎛を境にして、より大きいものは膨張、より小さいものは収縮に向かいます。

 後者は、比較的短時間(数十秒程度)において収縮し、マイクロナノバブル、ナノバブルへと変化していきます。

 じつは、この変化の過程において、じつに「おもしろい現象」が次々に起こっていきます。

 これに対し、膨張するマイクロバブルには、この「おもしろい現象」が何も起こりません。

 ですから、この両者においては、「おもしろい現象」が起こるかどうかに関しては本質的に大きな違いがあるといってよいでしょう。

 この現象については、後ほど詳しく解説する予定ですので、ここでは、この程度の説明に留めておきましょう。

 さて、この収縮するマイクロバブルの説明において、まず最初に説明しておく必要があるのは、「なぜ、収縮するのか」という問題ですので、これも後ほど詳しく触れることにしましょう(つづく)。

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