我が国発のオリジナルとしてのマイクロ・ナノバブル技術について、その今日的意味をより深く考えてみることにしましょう。

 すでに紹介した積水化学の研究開発に関する部長さんの「ご賢察」のように、我が国発のオリジナル技術は、わずかに2つしかなく、その一翼を担い始めているのがマイクロバブル技術という指摘ですから、その意味は小さくないはずです。

 かつて、黄金の80年を担ったのは、自動車と電機産業でした。

 しかし、21世紀になって、自動車産業は、その生産工場の半分を海外進出させました。

 また、電機産業は、激しい価格競争に陥り、その存立すら危うくなるような不振に陥り始めています。

 日本全体としては、全産業における製造業の比率が減少し、それに対してサービス産業が増大するという状況になっています。

 「日本の製造業は永遠なり」といわれていたことは、いつしか忘れ去られ、「製造業が国を亡ぼす」とさえ主張する経済学者まで出現するようになりました。

 新聞紙などメディアにおいては、幾度となくイノベーションの必要性が叫ばれ、それがなかなか生まれてこないと、今あるもので、とてもイノベーションとはいえないものを、イノベーションと見立てて、「今は、それを加速させるべきだ」と煽る論調まで出てきました。

 さらには、ある経済学者は、イノベーションを起こすには、強い経営能力が必要だといって、そのイノベーションを起こすには、アメリカでおきたIT経済イノベーションを真似て、まずは、その創造的破壊を日本で起こせと主張していました。

 そのIT経済イノベーションで創造的に破壊されたの側は、日本の方なのに、その負けた側に、さらに創造的破壊を促すのですから、これは二重に不可能に近いことなはずで、的外れの考えといわざるをえません。
 
 このような見解が、一流経済紙といわれる記事に掲載されるのですから、ここからは、ますます日本経済が混迷を深めていて、その行く先が見えなくなっているのだと思いました。

 加えて、今年になって、今度は「第4次産業革命論」なるものが登場してきました。

 その主要な内容は、AIやICTを用いて新たな産業を創生し、それを産業革命にしていこうとすることに特色があります。


 しかし、AIやICT、IoTなどに、そのような力があるのでしょうか。

 仮に、一定程度の力があったとしても、我が国は、創造的破壊をされる側でなく、する側に立つことができるのでしょうか。

 この動きは、ますます山の頂に向かって、その先端部分のみで世界を動かそうとしていて、その眼下に広がる大きな麓の部分をすっかり忘れているかのように見えてしまいます。

 その土台の部分が破壊され、衰退の一途の様相を見せているときに、はたして、その先端に産業革命が起こるのか、これは誰の目から見ても明らかなことではないでしょうか。

 周知のように、第1次の産業革命はイギリスで起こり、その特徴は、小規模手工業から大規模機械工場に変わる過程で生まれ、それ以前と比較にならないほどの生産量の飛躍的増大をもたらしたことにありました。

 その後の第二次、第三次の産業革命においても、そこの共通していることは、この生産量の拡大と富の増大を目指したものでした。

 ですから、次の新産業革命においても、その実現が不可欠になるはずです。

 その観点を踏まえますと、それらの富は、どこに、もたらされるのでしょうか?

 株式が上場されているわずか1400社にでしょうか、それとも、それ以外の約400万社に対してでしょうか。

 日本経済の病巣はますます深刻になり、前者の企業のみに富が集中し、その結果として中間層の没落と貧困層の拡大という異常な格差が広がり始めています。

 ある経済学者は、「経済停滞の原因は、輸出、設備投資、雇用、消費の停滞、マイナスの需給ギャップにある」と指摘しています。

 ですから、その停滞からの脱出は、輸出を増大させ、国内に設備投資をしっかりさせ、雇用を増大させ、消費の停滞から脱却させて増大させ、プラスの需給にする、そのために400万の企業を活性化させるという遠大な構想と、それにふさわしい産業革命論が必要なのです。

 果たして、その産業革命がAIなどによって実現されるのでしょうか?

 その行く末は、かつてのITバブルのように、バブル経済を作っては消滅させることに行きつく恐れはないのでしょうか。

 それよりも、もっと確実なことは、日本経済の土台作りであり、そこで多様に小規模でもよいから技術イノベーションの核をつくり、それを花開かせていくことではないでしょうか。

 幸いにして、マイクロ・ナノバブル技術は、その裾野形成において今が旬での創出を行っている最中であり、これによって400万企業の足元を明るくしていくことがますます必要になりそうです。

 その意味で、我が国発のオリジナルとしてのマイクロ・ナノバブル技術には、重要な使命と特別の期待が寄せられているように思われます。

 そう遅くない時期に、この大事業が実現されることで、我が国はますます世界から注目を集めることになるはずです。

 「我が国で生み出された技術を、かくもみごとに、そして豊かに発展したのか」

と少なくない人々に、驚きと感嘆を示していただくことにしましょう。

 おそらく、「第4次産業革命論」は、そう長く生き続けることはできないでしょうから、今のうちから、その次の第5次産業革命論の準備をしておく必要があるように思いますが、いかがでしょうか?(つづく)。
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