私の研究室に持ち込まれた、ある大手企業(先日来、テレビで出てこない日はないほどに食の安全が問題になっている企業)の系列会社の装置の実験が始まりました。

 このときの、この企業の売り込みは、「私どもが開発したマイクロバブル発生装置(超高速旋回式)で発生させたマイクロバブルと同じものを発生させることができた!」というものでした。

ーーー そうか、自分たちが開発した装置を売り込みたかったのか。それで、「共同研究」の名のもとにアプローチしてきたのであろう。

 ここまでの見通しはできていましたが、その時は、あえて、そのことを問いただすことはせずに、かれらの開発していた装置の性能試験を行うことに専念することにしました。

 その装置の特徴は、まず、空気をポンプで圧縮させ、その後に減圧弁を通過させて、マイクロバブルを発生させるものでした。

 すぐに、例の「白い泡」が発生してきて、それが水槽内に充満していました。

 もちろん、水槽の奥の方は、この白い泡で見通すことはできなくなっていました。

 「これが、あなた方がいうマイクロバブルですね。まちがいありませんね」

 かれらは、緊張しながら頷いていました。

 「それでは、このマイクロバブルの大きさを計ってみましょう。ここに、『マイクロスコープ』という便利な機械装置があります。これで、早速、あなたがたのマイクロバブルを観察することにしましょう」

 かれらは、ますます緊張していました。

 モニターの画面を見ていただき、その白い泡の拡大画面を観察しました。

 「最初の問題は、この泡がなぜ白く見えるのか、それを解明しましょう」

 かれらは、そんなことができるのですかという顔つきになっていました。

ーーー そうですよ、それを行うのがプロというものですよ。

 いろいろと解説を加える前に、そのマイクロスコープに映し出されたマイクロバブルの画像をしっかり見ていただきました。

 「マイクロバブルの直径が、50~70㎛程度のものがかなり多いようですね。これが、白く見える原因だと思います」

 かれらは、無言のままでした。

 「意外と小さい気泡は少ないですね。どうでしょうか?」

 「いやっ、小さい気泡もありますよ!」

 よほど、そのことがいいたかったのでしょう。

 大きな声で、懸命に訴えようとした若い社員の声が聞こえてきました。

 「そうですか。たしかに、小さい気泡もありますが、その数は非常に少ないですね。圧倒的に多いのは、50~70、80㎛といったサイズのものですよ。そのことが、この画面からも解るでしょう。よくご覧になってください」

 こういうと、かれは、そのまま黙ってしまいました。

 「どうですか。私たちが、通常見ている白い泡というものは、比較的大きなサイズの泡ですよ。

 この常識に従いますと、じつは、白い泡というのは大きい泡である場合が多いのです。

 したがって、この場合も、比較的大きいサイズの泡がたくさんあって、それが白く見えてしまうという現象であるといえますが、そのことは、お解りですか?」


 あいかわらず、かれらは、押し黙ったままでしたが、その表情から察するに、当てが外れて困ってしまったようでした。

 「『白い泡』、それは、じつは、比較的大きな50~70㎛の直径を有する泡であることが明らかになりました。それでは、この泡は、どんな科学的特性を有しているのでしょうか、次に、そのことを確かめることにしましょう」


 (つづく)。
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コスモス