「先ほどは、良い話し合いになりましたね」

 「そうだね、これがよいきっかけになるとよいね」

 「きっとなるでしょう」

 「これから、いろいろな問題を調査する必要がありますね」

 「やはり、農業分野が一番でしょうか」

 「そうだね、とりあえず、農業を中心にした6次産業化が進行されているようで、その活動の一環として、『宇佐ブランド』として認証されている商品を個々に調べてみたいですね」

 「いろいろとユニークな商品もあるようで、それらは、院内にある道の駅に展示販売されているそうですよ」

 「あのいつも訪ねている道の駅ですよね。帰りに寄ってみましょうか」

 「それはいいですね」

 こんな会話を交わしているうちに実家に到着、早速、依頼された荷物を取り出し、車に積み込みました。

 「久しぶりに、『親玉饅頭』屋に寄りましょうか」

 「夏に寄ったときに購入した『葛きり』は天下一品だったね。あれは、まだあるかしら?」

 やはり、葛きりは夏場限定だそうで、名物の「親玉饅頭(破れ饅頭のこと)」や「丸房露」などを買いました。

 ここは創業80年だそうで、現在は3代目さんが家業を継がれているそうですが、私が子供の頃には、お土産といえば、この親玉饅頭であり、なぜか、我が家には、この饅頭がよくあり、それをおいしく食べていた記憶が残っています。

 「次は、どこに行きましょうか?」

 「昼までには、まだ時間がありそうなので、あのQ君のところに行ってみようか!」

 「それはいいですね。場所は、よくわからないけど、先ほど聞いてみたら城井とかいっていたので、とにかく、そこに行ってみよう」

 国道10号線を通過して南に進むと、すぐに城井という地域があり、感を頼りに、この辺りではないかと思って、車から降りて尋ねると、それが同姓の家であり、その目当ての家を教えていただきました。

 かれとは、大学を定年で辞められる直前に会ったことから、その時から3年余が過ぎていました。

 車で、その家の近くまで行くと、いずれも姓が同じなので、一軒一軒訪ねていくと3軒目がかれの家でした。

 予約もせずに(電話番号もわかったいなかったので)、いきなり言って大丈夫かなと思って声をかけると運よく彼が出てきました。

 作業服を着て、これから何かをするときだったのでしょうか、元気そうな姿を見て、まずは安堵しました。

 かれとは、小学校、中学校がいっしょで、大学にいってからも親交がありましたし、同じ教員の道を歩んだこともあり、会えば話が弾む仲になっていました。

 「大学を退官してからも、元気そうだね」

 こういうと、例の調子で、威勢よく、そしていかにも楽しそうに近況を語り始めました。

 小学生のころから、よくしゃべっていましたが、その傾向は大学の教授になってからもますます研ぎ澄まされ、それが、大学を辞めてなお発展していました。

 これを「縦糸に水」というのでしょうね。

 おそらく、そのような話をする相手がいなくて、とにかく「飢えていた」のだと思います。

 企業との共同研究、研究開発金、特許のことなど、とにかく、スケールの大きい、おもしろい話の連続でした。

 前回の面会の時は、かれの話のみで帰る時間を迎えてしまいましたが、今回もそうなるかなと気にしていたら、退官してやや余裕を取り戻したのでしょうか、その懇談の後半になって、こちらのことを尋ねてきました。

 そこで、私どものトピックスのいくつかを紹介しましたが、その途中で、かれが、それを遮ってきましたので、こちらも、その都度切り返して、なんとか最後まで話をすることができました。

 その懇談の結果をまとめますと、次のような、今後に関する理解と合意が得られました。

 ①来年3月あたりから、地元の親しい方々を集めて、交流の場を設けるそうで、そこへの参加依頼がありました。

 ②私の方からは、一度、奥さんと一緒に国東の美味しい魚を食べに来てくださいというと、これについては喜んでいたようでした。

 ③また、来年6月には、私の名前が付いた「研究組織」を新たに立ち上げるので、その時には来ていただいて、なにかしゃべってくださいとお願いし、これも了解したようでした。

 ④双方の研究開発において重なる部分があるかについても意見交換を行い、どうやら、可能性のある分野が一つ見つかりましたので、これを追求してみたいと思いました。


 互いに、定年退官後の身ですから、やや余裕を持ちながら、徐々に発展していくと幸いではないかと思いました(つづく)。

kabocha
かぼちゃの花が咲いていました