「その植物工場の話は、すごい話ですね」

 「ありがとうございます。植物工場については、その栽培技術にかなりの問題があり、それらを根本的に解決しないと採算性は確保できませんね。現に、少なくない植物工場が不振に陥り、赤字倒産に至るところまで出ています」

 「どこが問題なのでしょうか?」

 「この植物工場もそうでしたが、第1に生産性が低いことです。とくに、冬場は夏場の半分以下の成長率になりますので、これをいかに解決していくかが重要になります」

 「そのために、マイクロバブル技術はどのような役割を果たされたのですか?」

 「同じ野菜の苗をいただいて、マイクロバブルの有無で、どう違うのかの比較試験を行いました。そしたら、その違いが根の成長に顕著に現れ、その根の本数が10倍も違いました」

 「それで、生産量の3割アップが可能になったというわけですか。本当に吃驚するような結果ですね」

 「おそらく、まだ生産量が向上していくのではないかと予測しています。マイクロバブル技術を正しく適用しないと、このような成果は出てきませんので、ここが重要なノウハウということができます」

 「なるほど、そうですか。ほかにも、このような成功事例はありますか?」

 「そうですね。最近の事例でいえば、地元の水産養殖業者の事例が参考になると思います」

 「かつての大分県は、日本でトップクラスの水産県と聞いています。国東沖も豊かな漁場だったそうですね」

 「そうですね。国東側から豊後水道を眺めますと、左が宇和海で、非常に有名な漁場です。右側は、南から佐伯の蒲江地区があり、ここではヒラメ養殖盛んで、ヒラメの出荷額が日本一になったこともありました。そして、関サバ、関アジの佐賀関、それから姫島と国東沖、いずれも日本を代表する豊かな漁場が形成されていました」

 「今は、どうなのでしょうか?」

 「この地域についていいますと、昔は、体長30㎝前後の天然の車エビがたくさん獲れていたそうです。しかし、今はまったく獲れなくなりました。また、エビの養殖場もいくつかは閉鎖に追い込まれました。なかには、そこでカキ養殖をおこなうところまで出てきています」


 「なぜ、衰退してしまったのですか?」

 「ひとつは、乱獲です。獲れる時に一挙に獲ってしまって、その漁場が消えてしまうという事例が全国的にもあり、ここでもそれが起こったといえるでしょう。

 2つ目は、病気が蔓延したことです。これは南方からやってきたウイルスによって、九州、四国・中国地方と広がっていき、ほとんどの車エビ養殖場が閉鎖されるという事態になってしまいました。同じことがタイなどの東南アジアにおいても発生しています」


 「そうですか・・・。ところで、その水産養殖業者の場合は、どうなのですか?」

 「先月の下旬に、私どもが新たに開発した専用装置を、その養殖池に据え付けました。

 このとき、マイクロバブルの発生と流動の様子を見て、『これは上手くいくかもしれない』と直観しました。

 その11日後に、再度視察し、その水産生物が10日で5倍に成長していることを確かめました。

 今月末には、再度視察をする予定ですが、この時点で、その成長ぶりがより明らかになるでしょう」

 「ひょっとしたら、それもすごいことではないでしょうか?」

 「そうですよ。このままいけば、その養殖業者にとっては大変なことが起こってしまいますね。

 これらは、地域に優れた技術力を適用した最近の成果としての典型的事例になり始めています。」

 こうして、地域の産業を振興させるには、そこに格段に優れた技術を適用することが大切であることに関する議論が深まっていきました。

 そして、この議論の最後において、次のような質問を受けることになりました。

 「国東特産の七島イについては、どのようなお考えを持っておられますか?」

 「地元の自治体や大分県においては、七島イの産業化を目指し、その拠点形成を行うことが当面の非常に重要な課題になっています」

 
「たしかに、そのとおりですが、何が一番の問題になったいるのですか?」

 「その重要な問題は2つあります。それを解決しないかぎり、その課題を達成することはできないと思っています」

 そこで、その問題点を次のように解説しました。

 ①七島イの産業化を目指すのであれば、その事業を行う主体者の形成が必要になります。その事業主体者を中心にして七島イ産業の拠点づくりを行い、それを核にして広げていくことが重要です。

 これが可能になれば、全国の若者に呼び掛けて、七島イ産業の輪を広げていくことも可能になります。

 現状では、この事業家主体の形成がなされてないようであり、ここからの脱皮と発展が望まれています。

 ②現状では、七島イ農業家の減少の恐れがあり、これを防ぎ、改善していくには、次の技術的問題の克服が必要になっています。

 1)七島イ農業における最大の問題は、その作業がきついことにあり、これを技術的にブレイクスルーする必要があります。

 作業を簡単にし、誰でも参加できるようにしないと、七島イ栽培においては素人である若者の関心を集めることはできません。

 2)それから、七島イ栽培の方法を科学的に明確にしていくことも非常に重要なことです。その栽培法、加工法、販売法、文献の明確化などが広く明らかにされる必要があります。

 本気で七島イの産業拠点の創出を目指すのであれば、それを可能にさせる研究組織を立ち上げることも重要です。

 3)同時に、現在の生産性、採算性を大きく向上させる技術開発が重要です。

 とくに、これまでは、5月~7月の80日間における「一期作」で終わっていますので、当面、その「二期作」を可能にすることが重要です。

 これについては、これまでにも様々な試みがあるようですが、その成功には至っていません。

 まずは、その二期作がなぜ難しいのか、その要因を明らかにする必要があります。

 ⅰ)天候など自然的要因

 ⅱ)栽培技術における問題点(10月以降の成長の停止をいかに改善するかなど)

 ⅲ)加工(織り方)、利用法などのおける問題、販売における市場の開拓問題など


 これらを解説しながら、次のように締めくくりました。

 「みんなの英知を集め、みんなの力で事業化に取り組み、その産業づくりを行うことが大切ですね。東京でのイベント、頑張ってくださいね」

 お三方のみなさんは、とても参考になったと、喜んでおられました(つづく)。
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