このところ、来訪者が徐々に再び増える傾向を示しています。

 昨日は、地域への移住促進の仕事をなされている方々3名が訪ねて来られました。

 私どもも、いわれてみれば、その移住者には違いありませんので、その移住の成果をヒヤリングしたいとのことでした。

 この方々は、このたび地元自治体が、東京で移住を希望する若者向けのイベントを企画しているようで、直接的には、そのイベントに備えての事前の調査を行っているとのことでした。

 「国東地方は、自然も豊かで暮らしやすく、若者たちが移住するには、とてもよいところです。

 そのために、国東の現地のことをもっと知りたいと思ってやってきました。

 これまでは、アート関係の移住者の方々の話を聞きましたので、今日は、地元の産業に関して、いろいろと聞かせていただきたいと思います」

 「そういわれてみれば、私たちも国東への移住者ですね。2012年の4月に山口県から2つの会社とともに移転してきました。」

 「2つの会社とは?」

 「(株)ナノプラネット研究所と(株)ナノプラネットという2つの会社です」

 「どう違うのですか?」

 「(株)ナノプラネット研究所はマイクロバブル技術に関する研究開発とそれを生かした技術開発を行い、一方、(株)ナノプラネットの方は、その商品化と販売を行う会社です」

 「それでは、国東に移住してこられた理由を教えてください」

 「高専を定年退職して、さて、どこに住むかを検討しました。すでに、2つの会社ができていましたので、その営業のことも考慮して決めることにしました。

 その候補地として、山梨県甲府、千葉県木更津、大分県国東の3つが選ばれました。

 前2者は関東地区であり、東京でのビジネスをしやすいところではないかと考えました。

 一方、国東には空港があり、ここから関東、関西に簡単に行けることが有利でした。

 結局、震災の影響を受けない安全な場所がよいということになり、国東を選ぶことになりました」


 「近くに空港があるという理由だけだったのですか?」

 「そうです。ここからは車で4分のところに空港がありますので、便利ですよ。

 もっとも、当初は、こちらが東京大阪に出かけることを考えていましたが、実際には、その東京、大阪から、こちらにやってこられる方々の方が多く、その見込みは外れてしまいました」

 このヒヤリングは、このようなやり取りで始まりましたが、すぐに、その本題である、「どのようにすれば、全国の若者を国東に呼び込むことができるか?」に移行し、それについてのかなり突っ込んだ意見交換がなされました。

 まず、隠岐の島の海士町と南長野における先進事例に触れることにしました。

 「これらの自治体において若者移住に成功した第1の理由は、その自治体が若者たちに立派な住宅を用意したことにあります。

 毎年、若者用の住宅を建設していくことは大変ですが、町長の強い意向で建設が進み、結果的に多くの若者が全国から集まるようになったと、その自治体の職員がいっていましたよ」

 「住むところは大事ですよね。国東でも空き家バンク事業が進められていますが」

 「自治体が率先して若者用の住宅を計画的に整備するという姿勢を示すことで、若者にアピールすることが大切であり、その空き家事業とは質が違っているように思います」

 「そうですね。自治体としての積極的な姿勢をアピールすることが大切ですね」

 「住宅の次は、そこに地域に根差した産業を創ることですが、海士町や南信濃地方には豊かな海や自然があります。これらを生かした産業づくりにおいては、今の時代に即した知恵と工夫を行うことが必要ですね」

 「その知恵と工夫とは、どのようなことですか?」

 「都会と比べますと、地方にはさまざまな不利なところがあります。その地方を変えようとすると、その不利な条件を、都会よりもかなり優れたものを創造する必要があります。それを技術の側面からいいますと、地域に根差すことができる優れた技術ということができるでしょう」

 「といいますと?」

 「都会にはなくて、地方にしかないもの、そして十分に地方から都会へと進出できる優秀な技術ということになります」

 「その技術に関する具体的事例はありますか?」

 「ありますよ。それは、私どもが、この20年開発してきたマイクロバブル技術が典型的事例ということができますね」

 「たとえば、どんな実績がありますか?」

 「そうですね。まず、近くにある8000㎡もある植物工場の事例がありますね。ここでは、4系統あるうちの一番生産量が劣っているところに、マイクロバブル装置を入れたところ、2か月で、最も生産量が多い系統を追い越して、生産量が3割もアップしました」

 「それは、すごい話ですね」

 「植物工場のみなさんがすっかり喜ばれて、すぐに追加の装置導入の依頼があり、ついこの間、それを設置してきたところです」

 「それは期待が持てますね」

 「そうです。4つの系統のうち、2つへの導入がなされました。そこで、その生産量をさらに向上させるために、より元にあるタンクにも、新たな試験システムも設置してきました」

 「それは、どういうことですか?」

 「ここの液肥供給システムは、2段階になっており、液肥の濃いタンクとそれを薄めた大きなタンクがあります。先ほど、4系統といったのは、この2段目のタンク系統のことで、『元にあるタンク』といったのが、その第1段目に相当します」

 「なるほど、その1段目のタンクの方の試験結果は、どうだったのですか?」

 「これは、その時に試運転しただけですので、その野菜をどの程度成長促進させるのかについては結果が出ていません。しかし、この試運転の様子を見て、『これは、良い結果が出るかもしれない』と直観することができました。これでさらに生産量がアップするか、とても楽しみですね」

 「生産量の3割アップが、さらに向上すると、これは大変すごいことになりますね」

 「そのとおりです。おそらく、笑いが止まらなくなるでしょう。なにせ、悩みの種が解消されることになりますから・・・」

 ここまでくると、私どもの目の前の方々は、目を輝かして聞き入っていました(つづく)。
ogi-2
裏庭から見える小城山と竹藪