その大学生のM君は、私の話を目を輝かせながら熱心に聞かれていましたので、そして大事な内容については熱心にメモを取っていますたので、こちらの方は、だんだんと気分よく話が進むようになりました。
かれの、問題意識は、マイクロバブル技術を水産分野でどう生かすかにあり、その観点から、どこに問題点があるかを詳しく究明したいと思われていたようでした。
その事例として、水産分野における最初の取り組みとなった広島カキ養殖改善には、それにふさわしい要素がいくつも内包されていました。
それらをまとめて、列挙してみましょう。
①素人ながら現場のカキ漁師と協力して実践的課題であったことから、必死で成果を生み出そうとした。
②マイクロバブルには、単なる溶存酸素濃度を改善させることだけではなく、斃死を防ぎ、急成長を実現させる生理活性作用があることを見出した。
③成長比較とともに、その生理活性のメカニズムを究明し、それにカキの血流促進が関係していることを明らかにした。
④周囲のカキが新種のプランクトンによって斃死するなかで、マイクロバブルによる斃死防止、成長促進を実現させ、30年ぶりに1年物の「若ガキ」を復活させた。
⑤460年(当時)の広島カキ養殖史上初の真ガキの夏出荷を実現させた。
⑥このマイクロバブルによる広島カキ養殖の改善が、北海道噴火湾のホタテ養殖、三重県英虞湾のアコヤガイ養殖改善に結びつき、全国的な普及に貢献した。
しかし、これらのように、いくつも重要な成果を生み出しながら、なぜ、マイクロバブル技術は、より広範な漁場にまで普及しなかったのでしょうか。
また、その原因は、どこにあったのでしょうか。
これが、かれの一番知りたかった問題のひとつでした。
その第1は、水産養殖といっても、それぞれの置かれている海や漁場の様子は異なっていて、そこには独特の水産養殖法が確立されているので、マイクロバブル技術は、それらと融合しながら発展していく必要があったことでした。
そのため、実際の現場において画一的な適用は難しく、その都度、その現場に適合したマイクロバブル装置のシステムを考えていく必要があり、これが第2の問題でした。
第3は、漁師の置かれている社会的経済的状況が厳しく、マイクロバブル技術の導入が個人に限られることが多く、それを組織的に発展させることが難しかったことにありました。
第4は、本技術を継続的に浸透させていくための事業主体が弱く、その発展の核や拠点形成が困難であったことでした。
第5は、その漁場に足を運ぶ研究者の方にも、小さくない勇気と知恵が求められたことでした。漁場の悪化、水産生物の大量斃死、水産技術における後進性、保守的、閉鎖的意識などに打ち勝つことは容易でなく、それらの困難を実践的に解決していく力が必要でした。
これらを踏まえると、マイクロバブル技術が本格的に普及していくには、いくつかのブレイクスルーが重要であり、そのために、これからもしばらくの時間が必要ではないかと思われます。
そのM君と接して吃驚したのは、私どもの研究成果をよく勉強されていて、私の話をよく理解できていたことでした。
そのせいでしょうか、こちらも、ついつい面白いエピソードも加えて話し進めたことで、舌の方も滑らかになり、なんと13時~20時まで延々と講釈が続くことになりました。
最後の方で、わずかな休憩時間をとり、一緒に夕食を食べることができました。
その折に、次の質問をしました。
「どうですか、これで事前にいただいた質問に答えたつもりですが、この程度でよろしいですか?」
「はい、すべて答えていただいたと思います。しかし、途中から、あまりにも面白い話が次々に出てきて頭の方がパ二ㇰってしまいました」
「そうですか、どうやら、私がいただいた宿題はやり遂げたようなので安心しました」
真摯に、マイクロバブルについて勉強をしたい、日ごろから抱いていた問題の解明をしたい、これらは、単に一大学生に留まることではなく、それが、小さくない展開を見せる日がくるのではないか、そのように思いながら接することができたことが幸いでした。
おかげで、久しぶりに長時間の講釈を行ったせいで、私の脳はかなり刺激されたようでして、その夜はなかなか睡魔が訪れてこないままで朝方近くまで懸案の仕事をさせていただきました。
かれは、この春に大阪の水産関係の会社に就職する予定だそうで、またいつか、どこかで会うことができるかもしれませんね。
その前に、卒業研究での爆発、ブレイクスルーが実現できることを願っています(この稿おわり)。
かれの、問題意識は、マイクロバブル技術を水産分野でどう生かすかにあり、その観点から、どこに問題点があるかを詳しく究明したいと思われていたようでした。
その事例として、水産分野における最初の取り組みとなった広島カキ養殖改善には、それにふさわしい要素がいくつも内包されていました。
それらをまとめて、列挙してみましょう。
①素人ながら現場のカキ漁師と協力して実践的課題であったことから、必死で成果を生み出そうとした。
②マイクロバブルには、単なる溶存酸素濃度を改善させることだけではなく、斃死を防ぎ、急成長を実現させる生理活性作用があることを見出した。
③成長比較とともに、その生理活性のメカニズムを究明し、それにカキの血流促進が関係していることを明らかにした。
④周囲のカキが新種のプランクトンによって斃死するなかで、マイクロバブルによる斃死防止、成長促進を実現させ、30年ぶりに1年物の「若ガキ」を復活させた。
⑤460年(当時)の広島カキ養殖史上初の真ガキの夏出荷を実現させた。
⑥このマイクロバブルによる広島カキ養殖の改善が、北海道噴火湾のホタテ養殖、三重県英虞湾のアコヤガイ養殖改善に結びつき、全国的な普及に貢献した。
しかし、これらのように、いくつも重要な成果を生み出しながら、なぜ、マイクロバブル技術は、より広範な漁場にまで普及しなかったのでしょうか。
また、その原因は、どこにあったのでしょうか。
これが、かれの一番知りたかった問題のひとつでした。
その第1は、水産養殖といっても、それぞれの置かれている海や漁場の様子は異なっていて、そこには独特の水産養殖法が確立されているので、マイクロバブル技術は、それらと融合しながら発展していく必要があったことでした。
そのため、実際の現場において画一的な適用は難しく、その都度、その現場に適合したマイクロバブル装置のシステムを考えていく必要があり、これが第2の問題でした。
第3は、漁師の置かれている社会的経済的状況が厳しく、マイクロバブル技術の導入が個人に限られることが多く、それを組織的に発展させることが難しかったことにありました。
第4は、本技術を継続的に浸透させていくための事業主体が弱く、その発展の核や拠点形成が困難であったことでした。
第5は、その漁場に足を運ぶ研究者の方にも、小さくない勇気と知恵が求められたことでした。漁場の悪化、水産生物の大量斃死、水産技術における後進性、保守的、閉鎖的意識などに打ち勝つことは容易でなく、それらの困難を実践的に解決していく力が必要でした。
これらを踏まえると、マイクロバブル技術が本格的に普及していくには、いくつかのブレイクスルーが重要であり、そのために、これからもしばらくの時間が必要ではないかと思われます。
そのM君と接して吃驚したのは、私どもの研究成果をよく勉強されていて、私の話をよく理解できていたことでした。
そのせいでしょうか、こちらも、ついつい面白いエピソードも加えて話し進めたことで、舌の方も滑らかになり、なんと13時~20時まで延々と講釈が続くことになりました。
最後の方で、わずかな休憩時間をとり、一緒に夕食を食べることができました。
その折に、次の質問をしました。
「どうですか、これで事前にいただいた質問に答えたつもりですが、この程度でよろしいですか?」
「はい、すべて答えていただいたと思います。しかし、途中から、あまりにも面白い話が次々に出てきて頭の方がパ二ㇰってしまいました」
「そうですか、どうやら、私がいただいた宿題はやり遂げたようなので安心しました」
真摯に、マイクロバブルについて勉強をしたい、日ごろから抱いていた問題の解明をしたい、これらは、単に一大学生に留まることではなく、それが、小さくない展開を見せる日がくるのではないか、そのように思いながら接することができたことが幸いでした。
おかげで、久しぶりに長時間の講釈を行ったせいで、私の脳はかなり刺激されたようでして、その夜はなかなか睡魔が訪れてこないままで朝方近くまで懸案の仕事をさせていただきました。
かれは、この春に大阪の水産関係の会社に就職する予定だそうで、またいつか、どこかで会うことができるかもしれませんね。
その前に、卒業研究での爆発、ブレイクスルーが実現できることを願っています(この稿おわり)。
マイクロバブルを発生させたときのカキ筏の水中写真です(江田島湾)
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