国東に来てからの4年間について、さらに詳しく分け入ることにしましょう。

 前回は、簡易のビニールハウスを設置したところまでの話でした。

 わずか6㎡の狭いハウスでしたが、私にとっては、オアシスのようなもので、ここに入って過ごす時間が増えました。

 しかし、ここで問題となったのは水路がないことでした。あり合わせの水槽をハウス内に移動させてみたものの、これでは植物工場にはならないので、「どうしようか?」と、困ってしまいました。

 「どうしようか?」

 思案を繰り返した結論は、自分で水路を製作することでした。

 手作りは、学生時代からの御手の物ですから、どのような水路を作るか、しばしの黙考が必要でした。

 ハウスの奥行きは2.5ⅿ、幅は2.5ⅿですので、真ん中を通路とすると、向かって左の水路の幅は90㎝、右手は80㎝の空間として3等分することにしました。

 そこで、長さ90㎝、幅90㎝の空間において細分された細長い水路を作ることにし、下には排水タンクを設置、その水を水路上端に汲み上げ、マイクロバブルを発生させることにしました。

 ここで重要なことは、野菜や植物が成長すると、その分だけ根が成長しますので、水路内の通水能力が落ちてしまいます。

 そして、徐々に流れにくくなりますので、水路の下端に設けた堰からの越流量が減少してしまいます。

 そうなると、水路内への給排水のバランスが崩れてきて、越流や水位の減少を招き、最後には、水槽内の水もなくなってポンプが稼働しなくなります。

 「これは、意外と大変な制御をしなければならなくなった!」

 と、思案に暮れたこともありました。

 次に、向かって右側の水路づくりを行いました。

 「左と同じではおもしろくない、もっとたくさん野菜を育てるには、どうすればよいか?」

 こんな思いがもたげてきて、上下の二段式がよいという結論に達しました。

 下段は、やや横幅を狭めて水路式に、そして、上段は、2つの水路式にし、その間に光が射し込む空間を設けました。

 これで上手くいくと思いましたが、じつはそうではありませんでした。

 その下段において、野菜が上手く育ったのは、最初だけで、当然のことながら、上部の野菜がどんどん成長してくると、下の方では野菜がよく育たなくなりました。

 この大きな原因は、光の不足にあり、途中でそのことに気付いて蛍光灯を追加しましたが、それでも改善には向かいませんでした。

 それでも、その上段における栽培においては、ピーマンや胡椒などにおいて目を見張る成果がでましたが、その育った本数は限られていました。

 この時期、最も困ったのは「ナメクジ」でした。

 ここは、ナメクジがよく発生するところですので、当初は、その防御法を知らず、それこそ毎晩のようにナメクジ駆除を行いました。

 せっかく育てたのに、葉っぱや実をナメクジが食べてしまいますので、このナメクジとの闘いはしばらく続きました。

 どうやら、水路の下の湿った部分に卵を産んでいたらしく、この水路を撤去しないかぎり、この問題の解決には至りませんでした。

 さて、素人ながら農家のような気分になって栽培を始めたわけですが、それは、それなりに失敗もありましたが、おもしろくゆかいなことでもありました。

 たとえば、最初のハウス(GFH、グリーン・フォートハウス、「緑の砦舘」という意味)においては、トマトの蔓がどんどん伸びて回廊ができました。
GFHハウス全体20130710


 これは、ハウスの上部が高温になり、それを避けて蔓が横方向にしか伸びることができなかったからですが、この伸びを見て、伸びるだけ伸ばしてみようと思いました。

 こうなると、トマトは、実を結ぶよりも蔓を伸ばすことに力を注ぎますので、わずかしか実ができませんでしたが、これは明らかに緑の回廊づくりを優先させたためでした。

 しかし、その回廊の一部において、ミニトマトのイエローアイコの実が生り、それが美しかったこと、さらには、驚くほどに甘く美味しくて感激したこともありました。

 また、そのミニトマトを幼子の孫(しらたまちゃん)に食べさせ、かれもその味に感激していていたこともよい思い出になりました。

 まだ、不十分な技量段階でしたが、それなりにおもしろいこと、感動することが次々に起こり、私のマイクロバブル野菜栽培は、さらに進んでいくことになりました(つづく)。
アイコ201307
                 イエローアイコの味に感動(2013年7月撮影)