この「ふじや」は、国道十号線沿いの宇佐よりの中津市郊外にありました。

 いつも、中津市から国東に向かって帰る際に通過しますので、この「ふじや」のことを思い出しました。

 「たしか、唐揚げの美味しいところが、この10号線沿いにあるといっていたよね?」

 「この近くですよ。『ふじや』という店です。寄りますか?」

 「寄ろう、寄ろう!」

 善は急げです。お目当ての店には、そこから数分で着きました。

 小さな唐揚げ専門店であり、入り口のドアを開けると約1畳半の店があり、カウンター越しに唐揚げを注文することができました。

 「骨なしを500gお願いします」

 早速、味付けされた鶏肉が油のなかで揚げられていました。

 いい臭いが店中に広がってきました。

 そして、揚げ立ての熱々を車の中で試食しました。

 唐揚げは、この熱々の状態が一番おいしく、何ともいえない幸福感を覚える瞬間といえます。

 「このサクサク感が、なんといえないね!」

 「この唐揚げが、今まで食べたなかで一番ではないですか?」

 相棒は、こういいながら、唐揚げの一つ目を食べ、二つ目をくれといってきました。

 この唐揚げの時には、とにかく凄まじい食欲が出てくるそうで、いつも5、6個は軽く平らげてしまいます。
 
 「なかの肉も柔らかく、味が沁みこんでいるねぇー!」

 「さすが、唐揚げ通のSさんがいっていただけありますね」

 「この味はどうして作るのかね。なんだか、今は亡きおふくろの味に味に似ているような気がするけど・・・」

 「Sさんによれば、たしか、前の日に仕込むのだそうですよ。たれが沁みこむと、肉の表面が透明になって、それを揚げると衣と肉の一体感が出るとのことでした」

 「そうだよね、この唐揚げは、何といっても、この衣の味が抜群だよね!」

 「衣の味が、他の店と違っています。国東の唐揚げとも違いますね」

 「ほんのりとした甘さがあり、ここが大きく違うね!」

 相棒の唐揚げをくれという注文は、その後も続き、とうとう、いつものように5個を軽く平らげていました。 

 その食欲につられて、私も3つまで進みましたが、それ以上は無理でした。

 --- たしかに、おふくろが作っていた唐揚げの味だ。とうとう、出会うことができたか!

 幼い頃に食べたことを走馬灯のように思い出し、うれしくなっていました。

 とくに、高校の時には、この唐揚げがいくつも弁当に入っていて、良く友達に「食べて!」とあげて、その友達がいつも喜んでいました。

 「これから、帰りの道がたのしくなるね」

 「そうですよ、その日の疲れが吹っ飛びますね」

 たしかに、そうで、この唐揚げが、疲れた身体を何度も癒してくれました。

 
こうして、「ふじや」の唐揚げを購入することが定番になっていきました。

 そして、今では、「唐揚げが300g(約8個)、味付け肉が1㎏」を注文するようになりました。

 後者によって、我が家でにおいても、さくさくの唐揚げを食べることができるようになりました。

 「ふじや」は、宇佐市との境界まで車で約10分のところにあり、この味が、どのようにして創られるようになったのか、そのことに興味を抱きました。

 今度、そのことについて尋ねてみようと思っています(「唐揚げ行脚」の稿はおわり)。
hirosige 20160309
                     広重五十三次 関 本陣早立