菊の花
今回の上京において面談した3人目は、このブログでおなじみのK1さんでした。かれは、大病を患っていて、わずか1日前の退院でしたが、わざわざ、12月13日の私の学会講演を聞きに来てくださりました。
この講演を終わって、少しの間、言葉を交わしました。しかし、この時はとてもきつそうで、私の講演をきくので精いっぱいの様子でした。
こんな体調においてでさえも、私の講演を聞きにきてくださって、真に感謝・感激いたしました。
そのかれから、もう一度会いたいという申し出があり、12月22日に会うことになりました。
その待ち合わせ場所は、新宿南口改札口でした。相変わらず、人通りが多く、混雑していました。
待ち合わせ時間の10時きっかりに、その改札口に出向くと、元気そうに手を挙げて待っている姿がありました。
「ずいぶん、元気になられましたね。声が以前の声に戻ってきましたね」
再会したかれの表情も、まるで違っていました。
「そうでしょう。5日前から食欲が戻って来て、食べるほどに元気になってきました」
「それは、よかったですね。食べる元気がでてくれば大丈夫ですよ」
このように、うれしくて弾む会話を繰り返しながら、駅の近くの喫茶店に向かいました。
互いに面と向かって、美味しいコーヒーをいただきながら、顔色もよく、頬もふっくらしてきた姿を見ることができて、とにかく一安心しました。
「学会での基調講演の反響はいかがでしたか?」
「おかげさまで小さくない反響がありましたよ」
こう切り出しながら、学会までの経緯と今回の講演の意義とその反響の中身などについて、やや詳しく説明させていただきました。
「長い間、みなさんの活動を見させていただきましたが、こうやって先生が、この学会に出て来られるようになったのも、ふしぎな縁といいましょうか、時は流れていますね」
「そうですね。中津の病院のK先生の勧めもあって、このような事態に至りました。ありがたいことですね」
「学会も、これから変わろうとしているのですね。先生が基調講演をなさったこと自体が、その現れとしての象徴的出来事ですよ!」
「そうかもしれませんね。微力ですが、私も尽力させていただく旨を学会の幹部の方々に表明させていただきましたが、みなさん、喜んでおられました」
「学会からは、なにか具体的なものがあったのですか?」
「ええ、ありましたよ。次の講演に関する打診がありました。今度は、より具体的な内容に踏み込んでの話ができると思います」
「それはよかったですね」
この学会講演に関する意見交換を皮切りにして、コーヒーを飲みながらの話し合いは、互いの近況報告にまで広がっていき、あっという間に2時間が過ぎていきました。
「先生、そろそろお昼時ですので、一緒にお昼はどうですか?」
「いいですね。食べる方は、もう大丈夫なのですか?」
こんな会話をしながら、次に案内されたのが、小田急のサザンタワーの三階にある「万窯」という肉料理店でした。
聞くところによると、ここは美味しい牛肉を食べることができるという評判の店のようで、二人して牛肉丼を注文させていただきました。
「先生、医者からはアルコールも飲んでもよいといわれていますので、ビールはいかがですか?」
「ビールですか。しばらく飲んでいませんので、少しお付き合いさせていただきます」
この牛肉丼をいただきながら、さらに2時間、互いの話題を持ち寄っての話にいくつもの花を咲かせることになりました。
このKさんからの話の節々には、重要な何かを感じさせる思いが随所に存在していましたので、今年は、さらに共同を進め、深めていく必要があることを認識させていただきました。
マイクロバブル技術を用いての緑の東京づくり、災害ですっかり寂れてしまった島の地域おこしの件、さらには、マイクロバブルを用いての植物活性技術の確立の問題など、論議は尽きず、その論議を交えてのロングランの昼ご飯となりました。
合計で4時間、別れた後も、余韻が残る話し合いでした。
こうして、今回の上京においては、Xさん、Tさん、K1さんと3つの面談を行いました。
それぞれに共通していたことは、マイクロバブル技術に関して前向きの論議を行うことができたことであり、いずれも明るい展望を見出す可能性が存在していたことでした。
これらは、小津映画の「東京物語」で描かれた友達論議とは正反対に異なるものでした。
その小津映画では、主人公の妻が、旅行疲れのせいでしょうか、故郷の尾道に帰るとすぐに亡くなり、その兄弟たちが帰ってきてからも、親子論議が進んでいきます。
結局は、親子の間にできた溝は埋まらず、それで映画は終わってしまいました。
一方、私の新東京物語は、甲府の孫たちと十分に触れ合い、そこで当初のかなり重かった疲れを癒し、さらには、上記の3つの友人たちとのこれからの付き合いを深める展望を持つことができたこと、そして、それに帰郷する前日には、すばらしい出会いもあって、真に実り多い物語を描くことができました(つづく)。
コメント