今回の講演において、最も強調したかったことのひとつは、マイクロバブルが収縮しながら、高温高圧化をたどる過程を明らかにすることでした。

 すでに述べてきたように、マイクロバブルの発生は、それが負圧下で起こります。

 その圧力を計測すると、マイナス0.06MPaでした。

 発生時のマイクロバブル内の圧力は、これに近いものと考えられます。

 この負の圧力を有するマイクロバブルが常温常圧下の水中内に発生すると、すぐに、その周囲環境の圧力に押されて収縮を開始します。

 この開始によって、その収縮に伴う振動も始まります。

 マイクロバブル発生装置の中は、0.2MPaほどの高圧ですので、それで勢いよく装置出口から押し出され、その後は、減圧の効果を受けて膨張します。

 この膨張が最初の過程であり、その後は、周囲の正圧の影響を受けて収縮する力が作用します。

 しかし、ここでは、それまで負圧下にあったマイクロバブルに対して、一挙に正圧作用が働きますので、急激に収縮しますが、同時に、その反動を受けて、逆に膨張し、これを起動として約9ヘルツの振動が開始されるのです。

 ここで、なぜ9ヘルツなのかについては、その理由は不明のままです。

 この振動は、それが収縮の最終過程で消えてなくなるまで、続きますので、マイクロバブルのサイズとその時の内外圧力差に依存して出現する現象ではないかと思います。

 さて、この振動が開始された後は、どのように変化していくのでしょうか。

 まず、最初の負圧状態から、常温常圧状態へ移行しようとすることが想定できます。

 9ヘルツの振動現象が発生しなければ、マイクロバブルは、この周囲の圧力場と同等に至った時点で収縮を止めてしまい、その時のサイズを維持して、そこに留まるはずです。

 いわゆる静的状態を維持して、そこで、マイクロバブルの動的運動は停止してしまいます。

 ところが、そのような停止状態は発生しないのです。

 その振動が延々と続き、収縮し続けるのです。

 ここに、他のマイクロバブル発生方式とは異なる超高速式マイクロバブル発生装置の重要な特徴があることに注目する必要があります。

 単に、マイクロバブルやナノバブルを発生させるだけが重要ではなく、急速に収縮運動を行い、高温高圧化を成し遂げていくことで重要な化学反応を起こすマイクロバブル水を製造することが非常に重要なことなのです。

 マイクロバブルであろうと、ナノバブルであろうと、その数や寿命が問題ではなく、最も大切なことは、設定された目的を成し遂げることが可能な優れた機能性を発揮できるか、どうかにあります。

 しかし、研究の初期段階においては、マイクロバブルやナノバブルの発生量やサイズ、さらには寿命が、ことさら重要であるように見えてしまい、それを追究することが研究の核心であると錯覚してしまうのです。

 技術の適用においては、かならず、目的があり、その目的を達成できるかで、その技術の価値が決まります。

 それは、その目的を達成できるマイクロバブルとマイクロバブル水の機能によって決まる問題であり、そのために、マイクロバブルやナノバブルのサイズや量、寿命があるはずです。

 この本末を転倒させて解釈してしまうと本質には近づけない、これが私が学んだ教訓だったのでした(つづく)。

hassei
マイクロバブルの発生原理を説明している様子