「専門職業大学」に関する第3の問題点は、既存の大学と比肩する「質の高さ」を本当に確保できるかどうかにあります。
この専門職業大学構想の「まとめ」の文書では、この「質の高さ」が繰り返し強調されていて、本構想における「キーワード」になっています。
また、このことは、同有識者会議において提出された経済同友会の委員から出された意見においても強く強調されいて、それを踏まえて、専門校学校から専門職業大学への移行においては、その数を限定すべきであるという提言もなされています。
既存の大学と肩を並べることができるように「質の高さ」を確保できなければ、この大学構想は失敗に終わる、その恐れがあることを意識してのことだと思われますが、はたして、その実現は可能なことなのでしょうか。
そこで、この「質の高さ」の水準が、どこに設定されているのか、ここが最も重要な焦点と思って、その部分を丹念に探してみましたが、それは、どこにも見当たりませんでした。
質の高さを強調しながら、しかし、その水準は具体的には示されていない、これが、この「まとめ」の文書における最大の問題点、弱点ではないかと思われます。
そこで、これに該当すると思われる事項を探して、その推測を試みることにしました。
その第1は、専門職業大学2年修了生に「短期大学士」の学位称号が与えられるとされていることです。
これは、既存の短期大学卒業生と同レベルかそれ以上の学力を有することに対して与えられる学位の称号ですから、短期大学卒業生の水準が、その「質の高さ」ということができることになります。
さて、私は、かつて、土木学会の土木教育委員会の委員を務め、その下にある高等専門教育小委員会の責任者をしていました。
この委員会は、高等専門学校、専門学校、短期大学からの委員で構成された委員会でしたので、この活動を通じて、工業系短期大学の事情を知らされ、そこで、短期大学の現状と問題点、将来像をよく議論させていただきました。
そのなかで、議論の中心になったテーマの一つが、短期大学生における「質の高さ」の問題でした。
この短期大学生の多くは、企業に勤めながら夜間に大学水準の技術を学びに来ていて、その水準をどこまで上げて教育できるか、ここに重要な核心問題がありました。
また、この問題は、専門学校や高専においても同じで、いわゆる実践的な技術教育の課題をみなさんでよく議論することができました。
ところが、この技術系短期大学においては、年々学生が集まらなくなり、その開設大学の数が減り、昼間の大学へと組み込まれて行きました。
この短大の閉鎖によって、委員も出せないということになり、私どもの委員会は短大抜きになってしまいました。
この事情を考慮しますと、技術系短期大学の減少は、その使命を終えてしまったといえ、この短大から昼間大学への移行は、その「質の高さ」を実現させて、そこでの学生募集を行うという方針の変更がなされたことであったと考えられます。
ですから、新たに設置されようとしている「専門職業大学」において、2年修了生に短期大学士を与え、かれらに「質の高さ」を求めようとするのであれば、これは「至難の業」に近いことになるのではないかと思われます。
その第2は、専門職業大学4年修了生に対しては「学士」の称号が与えられるとされていることです。
既存の4年制大学は、私立から国立まで各種あり、さらに国立大学内においても、その質の違いが明らかにされています。
教員スタッフも、予算も大きく違い、その間で序列も形成されていて、その競い合いがなされています。
ですから、それぞれの大学においても「質の高さ」が異なっていますので、専門職業大学の「質の高さ」の水準をどこに置くか、これを明確にしないままで、その指摘のみで済ますのであれば、それはほとんど意味をなさないということができるでしょう。
この「質の高さ」問題では、国立大学と高専間で、おもしろいことが起きました。次回は、その紹介をさせていただきます(つづく)。
広重 東海道五十三次 庄野 白雨
この専門職業大学構想の「まとめ」の文書では、この「質の高さ」が繰り返し強調されていて、本構想における「キーワード」になっています。
また、このことは、同有識者会議において提出された経済同友会の委員から出された意見においても強く強調されいて、それを踏まえて、専門校学校から専門職業大学への移行においては、その数を限定すべきであるという提言もなされています。
既存の大学と肩を並べることができるように「質の高さ」を確保できなければ、この大学構想は失敗に終わる、その恐れがあることを意識してのことだと思われますが、はたして、その実現は可能なことなのでしょうか。
そこで、この「質の高さ」の水準が、どこに設定されているのか、ここが最も重要な焦点と思って、その部分を丹念に探してみましたが、それは、どこにも見当たりませんでした。
質の高さを強調しながら、しかし、その水準は具体的には示されていない、これが、この「まとめ」の文書における最大の問題点、弱点ではないかと思われます。
そこで、これに該当すると思われる事項を探して、その推測を試みることにしました。
その第1は、専門職業大学2年修了生に「短期大学士」の学位称号が与えられるとされていることです。
これは、既存の短期大学卒業生と同レベルかそれ以上の学力を有することに対して与えられる学位の称号ですから、短期大学卒業生の水準が、その「質の高さ」ということができることになります。
さて、私は、かつて、土木学会の土木教育委員会の委員を務め、その下にある高等専門教育小委員会の責任者をしていました。
この委員会は、高等専門学校、専門学校、短期大学からの委員で構成された委員会でしたので、この活動を通じて、工業系短期大学の事情を知らされ、そこで、短期大学の現状と問題点、将来像をよく議論させていただきました。
そのなかで、議論の中心になったテーマの一つが、短期大学生における「質の高さ」の問題でした。
この短期大学生の多くは、企業に勤めながら夜間に大学水準の技術を学びに来ていて、その水準をどこまで上げて教育できるか、ここに重要な核心問題がありました。
また、この問題は、専門学校や高専においても同じで、いわゆる実践的な技術教育の課題をみなさんでよく議論することができました。
ところが、この技術系短期大学においては、年々学生が集まらなくなり、その開設大学の数が減り、昼間の大学へと組み込まれて行きました。
この短大の閉鎖によって、委員も出せないということになり、私どもの委員会は短大抜きになってしまいました。
この事情を考慮しますと、技術系短期大学の減少は、その使命を終えてしまったといえ、この短大から昼間大学への移行は、その「質の高さ」を実現させて、そこでの学生募集を行うという方針の変更がなされたことであったと考えられます。
ですから、新たに設置されようとしている「専門職業大学」において、2年修了生に短期大学士を与え、かれらに「質の高さ」を求めようとするのであれば、これは「至難の業」に近いことになるのではないかと思われます。
その第2は、専門職業大学4年修了生に対しては「学士」の称号が与えられるとされていることです。
既存の4年制大学は、私立から国立まで各種あり、さらに国立大学内においても、その質の違いが明らかにされています。
教員スタッフも、予算も大きく違い、その間で序列も形成されていて、その競い合いがなされています。
ですから、それぞれの大学においても「質の高さ」が異なっていますので、専門職業大学の「質の高さ」の水準をどこに置くか、これを明確にしないままで、その指摘のみで済ますのであれば、それはほとんど意味をなさないということができるでしょう。
この「質の高さ」問題では、国立大学と高専間で、おもしろいことが起きました。次回は、その紹介をさせていただきます(つづく)。
広重 東海道五十三次 庄野 白雨
コメント