①日本酒の「香り」を、そのまま残して、酸味とコクを出す。

②酸味とコクを引き出しながら、キレを最高度に実現する。

③酸味とコク、キレを保ちながら、まろやかさを生み出す。

上記①の課題においては、日本酒づくりの最後の工程、すなわちアルコール添加とその混合過程において、マイクロバブルを大量発生させるという工夫がなされました。

また、日本酒の香りをそのまま残して酸味やコクを失わないことに徹し、その微妙な調合と混合においては、いわゆる「利き酒」のようにして「マイクロバブル処理」を行いながら、最適状態を見出すことを可能にしたのでした。

 このとき、杜氏をはじめとしてスタッフのみなさまの「舌の力」が存分に発揮されたのでした。

次の②においては、最も難しいと思われる「最高水準のマイクロバブル制御」がなされたようでした。

もともと、酸味やコクを醸し出す成分は、分子量や粘性が大きいことから、口の中の舌表面や周囲の細胞に、すぐには浸透しにくいものです。

それらと比較すると、アルコールの分子量や粘性はより小さいことから、それが加わることで、より浸透性が高まることで「キレ」がよくなる傾向が生まれたのではないでしょうか。

加えて、添加アルコールを含む水中でマイクロバブルを大量発生させると、それらの成分の微細・粉砕化が可能になるとともに、浸透性を増加させる各種の勾配(熱的、化学的勾配など)が形成され、それらの作用効果によっても「キレ」を促進させたのではないかということが推察されます。

さらに、③の「まろやかさ」を引き出すことにおいても、マイクロバブルが重要な役割を果たしたように思われます。

その第1は、アルコールを含む液体中でマイクロバブルが大量発生(表面張力が水よりも小さいために、マイクロバブル発生量が数倍になる)することによって、アルコールが有する独特の「硬質性」や「いやみ」を適度に減じさせたことにあります。

第2は、酒に含まれる水の成分そのものにも、その作用が及び、水の硬質性を和らげ、甘みを増加させたことも関係しているように思われます。

それゆえに、従来の 「酒の甘さ」による「まろやかさ」ではなく、そのアルコールと水の「まろやかさ」が新たに加味されたのではないでしょうか。

その結果、「香り」とともに、「酸味」や「コク」を引き出させ、さらには「まろやか」という四拍子が揃った酒が新たに出現し、その重要な評価がなされたのだと思います。

これらの受賞は、その後も続き、モンドセレクションにおいては最高金賞を六連覇するという快挙が達成されました(下図参照)。

さらに国内においては、「全国酒類コンクール」においても「歴代一位」という特別の称号を得るまでに至りました。

   このようにして大吟醸酒「錦」は、文字通りの「世界一」と「日本一」を達成し続けています。
 この輝かしい事業の陰には、まず、「社運を賭けたマイクロバブル装置」の導入がありました。
 そして、それを知恵と工夫によって最高度に活かしたことが、これらの比類なき成功を得ることに結びついたのではないかと思います。
 これらについては、わが国の酒造メーカーのみなさんが真摯に学ぶ べき点が少なくないように思われます。
 2015年の7月、日本列島はいまだ梅雨の最中ですが、そろそろ、今年の受賞結果についての報告が舞い込んできそうな季節です。
 合計で29回という、超ロングランの記事になりましたが、これで終わりとさせていただきます。長い間のご愛読、真にありがとうございました。

モンドセレクション1
    モンドセレクション最高金賞を3年連続で受賞したときのハイクオリティートロフィー