問題点の第3は、「教育と研究」の問題です。

新たな高等教育機関としての「専門職
業大学」の特徴は、「質の高い最新の専門的・実践的知識や技術を教育する」ことにあります。

ここで、前回の記事においても問題になった「質の高さ」について再び言及しておきましょう。

その質を問うのであれば、単純に、既存の大学と比較して、その水準はどの程度になるのか、この点について、「まとめ」では、次のように示されています。

「既往の大学と比肩する高等教育機関として位置付ける」

ここでいう、既往とは、短期大学と4年制大学のことを意味すると思いますので、それらと比肩する、すなわち同等であるというのですから、新大学は、それらの既往の大学に匹敵するものであるといえます。

さて、専門職業大学の年限は、「2年」か「4年」とされています。

前者であれば、短期大学、後者であれば4年生大学に匹敵する水準を維持することをめざすことになります。

しかし、周知のように、短期大学と4年制大学においては、その教育の質において小さくない差異が存在しています。

したがって、専門職大学の学生が、2年で卒業するか、あるいは4年で卒業するのかによって、その質の高さは、必然的に大きく異なることになります。

ところで、高等教育機関における「質の高さ」を決めるもう一つの要因としては、教育研究問題があります。

既往の短期大学、4年制大学においては、この教育研究が、それらの設置基準において認められています。

すなわち、大学とは教育と研究を行う場であることが、学校教育法によってきちんと定められています。

ところが、同じ高等教育機関でありながら、これとは異なる設置基準が適用されているところがあります。

それが、「高等専門学校(『高専』と呼ぶ)」です。

「高専は、高等教育機関であり、研究機関ではない」、これが、創立以来の「定め」であり、ここから、高等教育機関としての「複線化」が開始されることになりました。

高専が1960年代に設置されたときの目標は、「実践的技術者の養成」、「中堅技術者の養成」、「大学に準ずる」の3つにありました。

この目標を踏まえて、ほぼ大学と同じカリキュラムが適用され(当時の東京工業大学のカリキュラムが基本とされた)、大学は、理論的技術者の養成機関であり、その対比において、高専は、実践的技術者、中堅的技術者養成機関という特徴づけがなされたのでした。

この場合、実践的技術においては、実験実習を多くすることによって具体化され、その総仕上げは卒業研究によって達成されることが試みられました。

また、「中堅技術者の養成」という目標は、当時の地方における国立大学工学部において設定されていたことから、その意味で、大学とほぼ同じレベルのものだったのでした。

じつは、高専においても、質の高さが創立当初から問題になり、その達成が非常に重要な課題であったのでした
(つづく)。

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広重 東海道五十三次 御油 旅人留女