本日は、次の2)の問題について考えてみましょう。

 2)最初はやや強火で煮て、灰汁取りを行う。

これは、外の液体の温度を高くし、豆の中の水については、それよりも温度が低いために、ここに温度差の勾配が生じることによって、外の温水が豆のなかに入りやすく、かつ、豆の中の灰汁の成分を出やすくしようとする行為だと思われます。

小豆の中の灰汁がなかなか出にくく、時間がかかるので、それを促進させるために熱を加えたのだと思います。

ところが、プロの方々は、この加熱法を採用せず、じっくり、何度も水を換えながら灰汁取りをされているようです。

時間をかけて、丁寧に灰汁取りを行う、これに徹されているのではないでしょうか。

 3)最初の煮湯を捨て、新たな水のなかでゆっくりと時間をかけて弱火で煮る。

これには、新たな水で冷やすという行為と、時間をかけて再び灰汁取りを行い、さらに、豆が壊れないようにして、中までよく煮るということが目指されているのだと思います。

 4)水温を急激に上昇させて高温になると、「横われ」が生じ、煮崩れの原因になる。

急激な温度上昇による「横われ」と、それが原因で起こる「煮崩れ」を起こさないことが重要です。

周知のように、小豆の皮の部分は硬く、中は柔らかいので、ここで微妙な問題が起こります。

最初は、殻の部分だけを温めていますから、殻に面する部分はより熱く、中の芯の部分は温度がより低い状態になります。

しかし、その事態が過ぎると、殻と中の芯の部分は同じ温度に近づいていきます。

そのためには、ゆっくり時間をかけて煮ていくことが不可欠になります。

ところが、この状態においても殻はより硬く、芯はより柔らかいままで、そこでの硬さの差は維持されています。

しかし、食べる側は、殻は柔らかく、そして芯は柔らかすぎない、これを期待します。

小豆の形が保たれる必要がある「ぜんざい」においては、この両方の状態が実現される必要があります。

そこで、コンビニで売られている「ぜんざい」について調べたことがあります。

この場合、小豆としての形が保たれていることが、まず要求されます。

これを追求するあまり、皮がやや硬く、芯の部分の柔らかさが丁度良いという状態で終わっていることが多いようです。

すなわち、両者をほどよい柔らかさに保つことは、至難に近いことではないかということが容易に想像できます。

 5)煮ている最中では、小豆の皮の部分が高温になり、芯の部分までには熱が到達せず、より低温の状態が続く。

そのために、こつこつと低温状態で長時間煮続けなければなりません。短時間に大量のものを作ろうとするコンビニ商品では、それが難しいために、そのアンバランスが生じてしまうのだと思います。

 6)そのため、煮ている最中に「差し水(さしみず)」を2、3回行い、小豆の外皮付近の温度を下げて、芯の部分との温度差を解消する。

たしかに、有効な方法だといえますが、この方法は、小豆の煮込みにおける外部条件を変化させる方法であり、小豆の芯、すなわち中身、内部条件を変える方法ではありません。

 7)これらの煮方が、古い小豆と新しい小豆では、それぞれ異なる。

ここで問題点を整理してみましょう。灰汁が出にくい、芯の部分が温まりにくい、温度を上げると横われが起こり、煮崩れが起こる、皮と中身の両方をほどよく煮込むことが難しい、これらが、小豆を煮込む時の壁として立ちはだかっているのだと思います。

この壁をどうブレイクスルーするのか、ここが問題になりますね(つづく)。
広重見附
                  広重東海道五十三次 見附 天竜川図