船は、6時20分に徳山港に到着しました。

これまで何度も利用してきた港ですから、どことなく懐かしさを覚える景色でした。

近くのコンビニで朝食用にむすびを2つ買い、高速道路の徳山東インターに向かいました。

よく利用していたインターであり、前の自宅は、ここ降りて5分のところにありましたので、ここを過ぎると「帰ってきた!」という実感をよく覚えていました。

この高速道路のインターから入り、数分程度経った頃でしょうか、前の車が停止し、なにかあったのかなと思っていたら、どうやら、事故が起きた直後のようで、隣の運転手の席からは、事故車から煙が上がっているとのことでした。

こんな緩いカーブのところで、いったい、どうしたのであろうかと思っていたら、前方の事故車の方に人が歩いて近づいていました。

車は大破していて中央分離帯に激突しているとのことでした。

また、左車線の方は、車の破片があって、それらをみなさんが片づけているとのことでした。

私の車の前には中型のトラックが停止していて、助手席の私の席からは、それらの事故の様子はほとんどわかりませんでした。

後で聞くと大変な事故だったようで、「車の事故に気を付ける」ことを、運転手と一緒に話し合いました。

その後、福山インターで休憩、事故のために、予定よりも30分遅れて到着の連絡を現地に入れておきました。

車は、倉敷を過ぎてやや南下し、早島インターから国道2号線に入りました。

ところが、ここで車が込んでいて渋滞がしばらく続きました。

車窓からは、春の温かい陽ざしが射し込んできて、上着のセーターを脱いでしまうほどでした。

岡山の豊かな農村風景を楽しみながら、徐々に渋滞も解消して、いよいよ目的地の瀬戸内市に入りました。

窯がある牛窓地区は、瀬戸内海に面したところで、前に前島、その後ろには、大きな小豆島が見える場所です。

すでに、東京からのK1さん、そしてK1さんを岡山駅で迎えられたM夫妻も到着していて、その一行には、同じく東京からのプロのカメラマンや同行者も加わっていました。

さっそく、巨大窯の様子を見に行き、火が焚かれている様子、高く積まれた薪の様子を見させていただきました。

この窯に向かっての左側には通路が新たにできていました。ここには、かつて薪が山のように積み重ねられていたので、ここを通過することはできませんでした。

それだけ、巨大な量の薪を燃やし続けてきたのでしょう。そのことを、この通路の発生によって実感させていただきました。

X先生は、1月4日以来、毎日、3時間置きの火の調整と点検作業をなされてきていましたので、ややほほがほっそりとなられていました。

「先生、がんばっておられますね。すごいですよ!」

先生は、こちらに来る前に出していた私の手紙を持って挨拶に出て来られ、とてもうれしそうでした。

「先生、本日は、最新式の装置を借りてきました。これで、巨大窯の焼き具合を確かめることができますので、どうか、よろしくお願いいたします」

その光学装置のことを説明しながら、その装置の組み立て、初期調整を待っていました。

また、その間、事前に調べてきた備前の土のことについて、次の説明をさせていただきました。

 ①備前の土の粒子のサイズについて

 これは、事前にいただいていたサンプルの土を見やすくなるように工夫し、その土の粒子のサイズを調べておきました。

 これまで、そのサイズは不明で、いったい、どのくらいの大きさになっていたのかが不明でしたので、まず、それを明らかにすることが重要でした。

 1)土の粒子の最大サイズは、10マイクロメートル(㎛)、すなわち、1/100㎜でした。

 2)これよりもややさい数マイクロメートルのサイズのものが多く、それが白色の粒子としてきれいに見えていました。

 3)逆に小さい方は、1マイクロメートル以下の、すなわちナノサイズの粒子も多数あり、文字通りナノ粒子が含まれていることも確認できました。

 これらを総合すると、備前の土づくりは、古来より積み重ねてこられた「ナノテクノロジー」であったということが明らかになりました。

 この備前の土の微細化の秘密は、そのナノテク性に関わっていたのでした。

 ②備前の土の組成について

 1)上述の土の粒子は、その色と形状から、二酸化ケイ素であろうと判断させていただきました。これは、別名、石英、シリカともいわれ、水晶の主成分でもあります。

これに熱が加えられますと、溶けてしまいガラス質になります。

 2)古くから備前の土の組成は、この二酸化ケイ素が60~70%、続いて酸化アルミニウムが約20%、酸化鉄が数%だといわれています。

 3)酸化アルミニウムは、白い粉のような物質のようですが、これは画像上において特定されていません。

 4)それから酸化鉄は黒色で、これが錆びると赤色が加わります。これは色が異なるために、比較的容易に識別できました(つづく)。
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備前焼の中規模甕