X先生の記事の最後には,最も重要な核心部分が書かれていました.

それは、「大窯の一部で必ず、神秘的な模様の作品ができていた」ということでした。

何十年と焼き物士をしてきた先生が、神秘的というのですから、想定外、想像外の作品模様だったとのではないかと思います。

これを私は聞きたかったのです。しかし、それは適わず、不明のままでいました。

ですから、この記事に、そのことが書かれていますので、「そうだったのか!」と思いを新たにさせていただきました。

その核心の部分です。

「通常は、薪の灰が結晶化し、ゴマ模様になるが、大窯ではその点々が動き、緑がかった線となるものがあって不思議だった」

ここで思い出してみましょう。

祖父が、燻(いぶし)を教えてくれたということを思い出してみましょう。

この燻で膜ができ、その灰が結晶化してゴマという備前固有の模様をつくるのですから、これは非常に重要なことです。

灰は、金属の一種で、ごく微量のものが降りかかることによって、それが温められると溶けて固まる際にふしぎな模様ができるそうで、真に、ここに焼き物の妙があるということです。

ところが、そのゴマ模様が動き、線を作るのですから、しかもその色が緑がかっているというのですから不思議につながっていくのです。

まず、天から線へが、どうやって形成されるのでしょうか。焼いた際の流動が長く大きくできないとこれは起こらないはずです。

小さな温度でさっと高温で焼いてしまうと、ゴマはゴマとしてしか焼けない、それが動くにはどうすればよいか、ここをどうすればよいのか、おそらく先生がもっとも思案され、追究されてきたところではないかと思われます。

しかも、その線が緑がかった色をしている。なぜでしょうか?

そこで、今までの先生の言葉を思い出してみましょう。

まず、できない理由をならべていきましょう。これを世間では、消去法といいます。

1)窯が小さいとできなかった。

2)土ができないと焼き物として成り立たない。

3)高い温度で焼くとできない。

4)温度が低すぎるとゴマの結晶ができない。

5)高温で長時間焼いてもできない。

6)燻がないとできない。

結局、窯の大きさ、土の出来栄え、温度の高さ、低さ、窯焼きの時間、燻の程度、薪の材質、焚き方、という7つの条件のなかから、最もよいと思われる1点を探していくのです。

「備前は科学です」、これは先生の口癖ですが、その通りの科学的備前焼づくりをなさっているのだと思います。

これで、土が動き、心が動く、備前の科学は理解できたでしょう。

むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、おもしろく掘り下げさせていただきました(つづく)。
北斎 相州 江の島
葛飾北斎 富獄三十六景 相州 江の島