窯の温度が1000℃を超えると、焼きの仕上げの段階になります。

すなわち、窯変が始まるのです。

しかも、これは、わずか0.1㎜の厚さの世界で起こる出来事です。

「1000℃を超えるようになったら、伺います」

これが、私どもの意向でしたので、いよいよその時期が近づいてきたということでしょうか。

さて、先生の記事に戻ると、薪の次には「土」の話が書かれていました。

「陶土は専用の畑をもうけ、何度も打ち返して水をやり、凍らせ、天日にさらし、何年も待つ」

「土は自然の力で微細に粉砕したものほど焼成時の変化が起こりやすくなる」

これらの土づくりは、昔からの伝統に基づき、延々と続けれてきたことです。自然に晒され、自然によって鍛えられた土こそ、備前焼きの命なのです。

この採掘から始まり、何年もかけて焼き物に使えるようになるまでの過程において、一貫している問題は、先生も書かれているように「微細化」です。

土の粒子を数限りなく小さくし、それによって備前の土ができあがるのです。

また、それを作り上げるまでに、常に自然に晒すという行為が繰り返されるのは、なぜでしょうか。

小さくするのであれば、それこそ粉砕機によって小さくすることが可能ですが、この方法が採用されないのは、なぜでしょうか。

そこで、この土に関しては、次の疑問が湧いてきます。

①微細化というのは、どこまで微細化されているのか。

②そして、この自然とともに微細化を行う意味は、どこにあるのか。

①に関しては、出来上がった備前の土とともに、その土と水が入ったサンプル容器をいただいたことがありました。

このサンプルを手で振ると、その粘土粒子が全体に広がり、その後しばらくは浮いた状態で濁ったままでした。

このように、沈まない状態にまで土を微細化していたのです。

粘土であるにもかかわらず、なかなか沈まない、この理由は、粘土粒子が互いに反発し合って、沈もうとする粒子に反発することにあります。

この状態をコロイド状態といい、その粒子を「コロイド粒子」といいます。牛乳が白いままを保つのは、このコロイド現象が起きているからです。

コロイド粒子のサイズは、1㎛(マイクロメートル)から1nm(ナノメートル)といわれています。

いただいたサンプル缶を長時間静置しておきますと、最終的には、すべての粒子が沈んでしまいますので、おそらく、このコロイド粒子に近いサイズにまでは、微細化がなされているのではないかと推測していました(つづく)。
北斎 礫川 雪ノ旦
                                                                  葛飾北斎 礫川雪ノ旦