今回から、食料問題のなかでも、とりわけ重要な「植物工場」を取り上げます。

この問題に関心を抱きはじめたのは約10年前からで、様々な角度からの実践と検討を重ねてきました。

この植物工場は、過去に2度ほどブームになった経緯があり、ここ数年は、その3度目のブームに至っています。

そのなかで農商工連携の典型的モデルとして、この「植物工場」が取り上げられ、膨大な研究開発資金が投入されてきましたが、どうも、それらの成果によって、これが発展し、広く普及されるという事態には至っていません。

それは、いったい、なぜなのでしょうか?

おそらく、少なくない方々が、これに関心をいだき、積極的に取り組まれてきていて、多くの苦労をなされているのではないかと思います。

なぜ、その苦労が報われるようにならないのでしょうか?

これらを重要な問題意識にして、その植物工場問題により深く分け入ることにしましょう。

まず最初に、最大の問題点を指摘しておきます。

それは、「十分な採算性が取れていない」ことにあります。

高度に発達した資本主義社会の中で、採算性がとれない事業を行うことがあるのか、ということを問いたくなるのですが、じつは、そのようなことが、この分野では、最初から発生し続けているのです。

この問題を解明し、そこに解決の糸口を見出すには、まず、この採算性問題の本質を明らかにする必要があると思います。

その第1の、そして最も本質的で重要な問題は、その技術的未熟性にあります。

結論から先にいえば、その採算性を十分に確保できるほどの技術的確立に達していないことにあります。


その理由は、次の3つにあります。

植物工場の競争相手、それは、古くから行われてきた露地栽培です。

これとの比較において優れた利点が出てこないと、後発の植物工場は勝っていけないはずです。

これは、後発者の宿命でもあります。

第1は生産量の問題です。植物工場においては、24時間、野菜に照明をあてて成長を促すとされていますが、これがいうほどに実現されてはいません。

やはり、植物が十分に育つには時間が必要であり、これを格段に優れた状態にまで発展させることは、そう簡単なことではありません。

第2は味の問題です。消費者が野菜を購入するときに、最も重要な選択尺度とするのが、この野菜の味です。

だれしも、おいしい野菜を食べてみたいと思って購入するのですが、そのおいしい野菜がなかなか手に入らくなっています。

そして、植物工場の野菜は、その味において、露地野菜の味を勝ることができていないのです。

これまで、植物工場野菜は、「水っぽい」、「味が薄い」などといわれてきましたが、これを克服することができていません。

第3は価格の問題です。近くのスーパーには、植物工場野菜と露地栽培野菜の両方が売られていますが、いつも、そこで売れ残っているのは前者のほうです。

その理由は、露地野菜と比べて2倍の価格帯で売られていますので、だれも買おうとはしないのです。

ここから、必然的に、次の課題が生まれてきます。

 ①生産性を十分に向上させる。
 
 ②味を格段によくする。

 ③価格において露地野菜と十分に競争できるようにする。

次回は、これらの問題をさらに深く分け入って考察することにしましょう(つづく)。
広重五十三次 神奈川

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