数百個の焼き物のなかから、わずか2つの作品が、X先生の心を捉え、探究の目標になりました。

しかし、この2つが完成された作品ではなく、自分が求めていたものに近い出来栄えに近かったにすぎなかったのです。

「これを、どのようにしたら、もっと良いものにすることができるのか?」

この探究心に火が点けられたのでした。

土を究め、水を求め、そしてたどり着いたのが、窯の大きさとその焼き方の問題でした。

小さい窯ですと、予想した作品しかできません。

自分の予測を超える「ふしぎな魅力を放つ」作品はできなかったのです。

登り窯の大きさは、20m、そして50mへと長くなっていきました。

その度に、その「ふしぎな」作品の数が徐々に増えてきました。

しかし、それで満足できる域に達したわけではありませんでした。

じつは、X先生には、もう一つの大きな目標がありました。

それは、約500年前の焼き物を復活することでした。

最初は、その欠片を、そして二度目は、完全な作品として残った焼き物を見せていただきました。

「どうですか、しっとりしていて落ち着いているでしょう」

「そうですね。手触りで、そのしっとり感が解りますね。それにしても、500年前の風格がありますね!」

周囲のみなさんも、「そうだ、そうだ!」といっていました。

「この500年前の作品が再現できないのです!」

国宝クラスの域を超えているX先生にとっては、500年、1000年という時間の単位で、打ち負かすべき相手がいたのです。


(つづく)。

北斎龍-5

葛飾北斎の龍