この瀬戸内市行きの契機は、マイクロバブル入浴仲間のM2さんによってもたらされました。

その彼は、数年前に、ある寿司屋で、この陶芸家Xさんに出会ったそうです。

「たしか、この方は、地元で有名な陶芸家のXさんではないか」

と思い、声をかけられたそうです。

「先生、もしよければ、何か手伝わしていただくことはありませんか?」

「何もありません」

こうきちんといわれ、その時は、それで終わったようでした。

ところが、このM2さんは、ヒトに対する独特の目利き力があり、ヒトから信用を得るのに、人並み外れた知恵を有していました。

普通の方なら、断られると終わりですが、かれはそれに挫けず、陶芸であれば薪が要るであろうと推察して、せっせと、家の解体で出てきた木材を持っていったのです。

これには、X先生もさすがに断ることができずに、この提案を受け入れたことが、事のはじまりでした。

なにせ、薪を集めるのに苦労していたので、M2さんの知恵は、ずばりそこを狙ったものでした。

すでに、10トントラックで300台分の薪が集まっていても、それでも薪は足らない、乾燥したよく燃える薪が必要である、そのような事情があったのです。

それからは、家の解体がある度に、その乾燥した松の廃材が、薪として運び込まれるようになりました。

当然のことながら、M2さんの信用は格段と高まっていきました。

しかし、普通の方なら、そこで終わるのですが、M2さんは違っていました。

その陶芸家の先生が、もうひとつ困っていたのが水の問題であり、今度は、その難問に取り組むことになりました。

もともと、登り窯は、小高い丘の斜面を利用して建設されます。その際、重要なことは、その斜面において水がない、すなわち保水性に乏しいところが選ばれます。

それはなぜかというと、1000℃近くの高温で陶器を焼くわけですから、そこに水があると水蒸気爆発が起こる可能性があるからで、それで窯が吹き飛んでしまっては元も子もなくなってしまいます。

そのため、窯の近くでは、井戸がなく、仮に井戸を掘ろうとしても、水が出てこない、それが窯場の常識というものでした。

ところが、M2さんは、この常識に挑戦して、非常識を成し遂げようとされたのでした。

聞くところによると、彼には、独特の水の在処を探し出すセンスがあるとのことで、いままで一度も井戸を掘って水が出なかったことはなかったそうです。

そこで、この井戸を求めての水探しが、この窯場で始まりました(つづく)。