佐藤論文においては、1950~2050年における重要課題(航空宇宙、医療、環境、エネルギー、食料)の緊急度が示されています。この場合、緊急度は重要度と換言してもよいでしょう。

それに注目しますと、2014年の時点では、「食料」と「エネルギー」が肩を並べて第1位、続いて「環境」があり、そのすぐ下位に「医療」があります。これらに対し、「航空宇宙」は、はるか下に位置し、時代が進むにしたがって、その緊急度はさらに低下しています。

また、その上位4者については、医療がほぼ横ばいで、これから緊急度が増すのが「食料」、「エネルギー」であり、「環境」がそれらに続いています。

これに基づけば、これからの35年は、「食料」と「エネルギー」が最も重要な課題となることが明らかにされています。

そこで、前者における考察を行いますが、これに関して、著者(佐藤浩)は、食料の主役である植物について、「流体力学的に植物を成長促進させる」ことを考究されています。

この「流体力学的に」とは、植物の外部および内部における各種の流れを制御することを意味しており、前者においては、植物の外部環境における風や炭酸ガスなど、気体の制御や、その結果としての人工光合成の促進問題と結びつきます。

一方、後者については、「野心的な」試みとして、「植物内部の流れの制御」の重要性を強調されています。

おそらく、佐藤先生は、この制御問題に大きな関心を持たれていたようです。

「植物の成長、開花、結実などを制御するCPU、CLOCK、MEMORYなどはどこにあるのでしょうか。今のところそれは分かりません」

と述べられています。この場合、CPUは「中央演算処理」、CLOCKは「タイミング信号」、MEMORIは「記憶」と訳されます。

おそらく、これらは、順に、光合成などの物質代謝機能、発芽から成長、開花、結実への変換機能、種への成長機構の刻み込みなどに該当するのではないかと思われます。

彼は、この植物の諸機能を、これまでのように単に待ちながらの成長ではなく、その植物体内の流れを人工的に制御する可能性について言及したのでした。

栄養を有する水溶液を根から吸収させ、それを植物体内の流れの促進で、植物の生産増進を図ることができるのではないかと考え、こう続けています。

「センサーとCPUによって作られる自然の制御物質発現のメカニズムが分かれば、開花、結実の人工制御の可能性が生まれます。遺伝子を操作するのではなく、生体そのものを制御するのです。人間がビタミンや健康食品を摂るのによく似ています」

ここでのキーワードは、「センサー」、「自然の制御物質」の2つです。前者は、各種の刺激を感知し、判断できる装置のことをいい、後者は、自然の制御や反応によって生まれる物質のことをいいます。

これを解りやすく言い換えれば、いかにして、刺激を感知し、そのことで成長、開花、結実を制御促進させる物質の生成を可能にするか、さらには、その作用機構を明らかにするか、という問題の解明に相当することではないかと思います。

私どもが、疲労回復や健康維持のために、ドリンクやビタミン剤を飲むように、それに相当する物質を見つけてやれば、植物本来の機能を引き出すことが可能になるのではないかと思います。

この後者に関することは、「植物ホルモン」の機能がよく似ていて、それをどう引き出すか、の問題でもあるように思われます。

この植物栽培に関する「鋭く、大きな直観」については、その論理的推察の具体化が必要であり、それは可能であることを示唆しています。

そのヒントは、まず、抜群の生産量の増大を可能にする事例の研究、実現できないような吃驚を誘起させる現象の研究から導き出せるのではないかと思います。

私の身近にも、そのような具体例が生まれてきていますので、それらの究明を通じて、その糸口を徐々に広げていくことが何よりも重要ではないかと思います。

その際、鋭く、大きな直観を用いて、この「優れた洞察」を、とことん追求し、可能にしていくことが重要であるように思われます(つづく)。

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庭のコスモス(筆者撮影)