「鋭く、大きな直観」、この意味を考え続けてきました。本日は、さらに、そこに深く分け入ることにしましょう。

まず、「鋭さ」についてですが、それが鋭ければ鋭いほど、すなわち、鋭さの水準が高くなると、物事に、それだけ深く切り込むことができます。

次の「大きさ」においては、その規模や強さ、量が問題になります。その対象が思考や概念の場合には、時空間を超える尺度のようなものと考えることができます。

「直観」は、「洞察」ともいえますので、「鋭く、大きな直観」とは、「本質に、時空間を超えて、深く切り込んだ洞察」と言い換えることができるのではないかと思います。

ゆえに、この洞察の結果は、その皮相においては理解が及ばず、長い時間をかけて時代が進まないと、その正しい評価を得ることはできないのです。

しかし、深く切り込んだがゆえに、その表層が覆われてしまい、そして、長い時間を経ることで、世の中に忘れられてしまうことも少なくありません。

時には、ひょんな偶然から、それが世の中の注目を浴びることがあります。たとえば、ゴッホの絵は、画商であった弟のテオが、すべて持っていました。

そのテオも亡くなり、一時は、ゴッホもテオも完全に忘れられた存在でした。

ところが、テオの関係者が、絵画と一緒に大切にされていたゴッホからのテオ宛の膨大な手紙を見つけます。

いつも困窮していたゴッホは、筆まめで、テオ宛に手紙を送っていて、それを読んだ関係者は、それを本にして出版しました。

結局、この本が評判となり、それに伴ってゴッホの絵画も注目されるようになり、世界的名声を得るに至ったのでした。 

ですから、「鋭く、大きな直観」による洞察ほど、その波紋は、どこまでも広がりますが、それが反射となって返ってくるまでには時間がかかる、これが世の常なのです。

さて、先に紹介させていただいた佐藤先生の論文における核心は、実利流体力学の主題として、食料、エネルギー、環境、医療の4つの分野の重要性を示し、航空宇宙に関する流体力学の転換の必要性を明らかにしたことにありました。

なかでも、食料、エネルギー、環境分野における流体力学の果たすべき役割を強調し、そこに学問的未来があることを強調されたのでした。

これは、世の中の巨大な変化を見通しての、真に「鋭く、大きな直観」によって得られた結論でした。

幸いなことに、本論においては、その4つの分野における佐藤先生の記述がありますので、それらを基本にしながら、より詳しく分け入ってみることにしましょう(つづく)。
20141203
庭の菊、筆者撮影