広島カキ改善の記事が続いていましたが、本記事から、ようやく、危機管理展に出展したポスターとパンフレットの内容に戻ることができます。

日本全国の海域の貝が、立派に成長できずに産卵し、いわば未熟児の貝の子孫を産卵し、放卵し続けています。

さらに、海の汚染の進行、有害物質の流下、拡散などの影響も受け、貝たちはますます成長できなくなっています。

そのことが、かつては養殖期間が1年であったのが2年、3年と延びていることに顕著に現れています。

私たちの食卓に上ってくる少なくない貝は、このような危機的状況下で育っている貝なのです。

しかも、この危機的衰退は、異常な高温化によって、さらに深刻な状況をつくりだします。

最近では、1998年前後において広島湾、英虞湾などでカキ、阿古屋貝の大量斃死問題が起こり、2010年には、宍道湖のシジミの斃死、それから陸奥湾ではホタテ漁において約65億円の被害が出ました。

ここで、重要なことは、この極端な異常高温の事態は治まるものの、それで海の状態が決して回復するわけではなく、慢性的に、その悪化が温存され、さらに、徐々に進行していくのです。

よく研究者がいうことに、海が悪くなるために費やしたエネルギーを1とすると、その回復には、その3倍のエネルギーが必要になるという説があります。

ですから、異常事態がいったん治まっても、それは一時的な若干の回復に留まるだけのことであり、漁場の本質的な劣化状態にはほとんど影響を与えていないのです。

そのため、貝の成長が遅くなり、小さい貝であっても出荷せざるを得なくなり、それも採りつくすか、収穫制限を行うしかなく、結果的には、養殖期間がどんどん延びていかざるをえないという状況に追い込まれていくのです。

この養殖貝の成長不足、養殖期間の延長の問題は、当事者の漁師にとっては重大で、死活問題であるともいってもよいでしょう。

一方、その漁師や水産業を支える側の立場にあるものにとっては、その衰退と危機にある現状をブレイクスルー(突破)する課題が真正面から突きつけられています。

ここには、わずかな目先の改善や手直しでは到底解決できない本質問題が横たわっています。

東日本大震災の被害を受けた大半では、第1次産業が形成されていた地域ですから、それを根本的に改善する、すなわち、危機と衰退にある現状を、その根底から打破し、そこに新たな形態の豊かな1次産業を構築していくことが本質的に求められているのです。

これらの地域には、決して十分とは言えませんが、かなりの財政的投入と支援がなされていますので、その本質的な成就が可能になったかどうかの実態も、徐々に明らかになり、広く観えてくるのではないかと思います。

さて、例によって、やや前置きが長くなりました。本題に入りましょう。

まずは、一枚の写真を示します。これは、2011年8月3日に撮影されたものです。震災から、約5か月、この翌日に、大船渡湾においてマイクロバブルを大量発生を開始させたのでした。
殻長4、5㎝の小さなカキです。この身をよくご覧ください。やや赤みが淡く加わった白いものが卵(たまご)です。文字通り、産卵したカキなのです。

これを採取したのが8月3日ですから、夏になって水温が上昇すると、この産卵が始まり、それが増えて、放卵直前の状態のカキになっていました。

因みに、この時の表層の水温が17℃でしたから、これが数日経過して18度℃以上になると一斉に放卵が始まりますので、これは、その放卵直前の状態でした。

立派に大きく成長できずに、放卵する、いわば未熟児出産の状態、そのものだったのです。

当然のことながら、この身の部分を切って、中身を確かめました。卵であれば、ミルクのように海中で、それが広がっていきます。

たしかに、そのミルクが海中に流れて広がりました。どのカキも、この産卵状態にありました。

これが、数日後に、そのまま放卵して、やせ細るか、それともマイクロバブルで成長に向かって、この放卵を取りやめ、身入りに向かうのか、これがいきなり問われることになりました(つづく)。
産卵かき20110803