第2の壁突破(ブレイクスルー)は、「カキの成長」が遂げられていること、そのものでした。

その証拠となる最初の写真は、すでに、10月26日付の記事において示されています。

念のために、この写真を再度示すことにしましょう。

19990806kaki
1999年8月6日 カキの半成貝(筆者撮影)

この写真から、現状を突破する「ブレイクスルー」として、何が観えるのでしょうか。読者のみなさんにおかれましては、この写真をしっかり、ご覧いただくと幸いです。

これより、このカキが卵を一切持っていないことが明らかです。すなわち、このカキは、産卵をしていないのです。そのことは、この白い体表面の奥に、その産卵部分がないことで解ります。

この白色は、グリコーゲンが豊富な時の身の色であり、この部分が厚いために、中の内臓の部分が少しも透けて見えていません。

すでに述べてきたように、広島湾では、カキの殻長が5㎜や1㎝の段階で、そのほとんどが早くも卵を有し、それが、水温上昇とともに、8月になって一斉に放卵を開始するようになります。

ところが、このカキには、その産卵部分がまったく認められません。

これは、いったい、どういうことなのでしょうか。

もともと、稚貝の段階で、そのほとんどが産卵していたにもかかわらず、それがなくなって消えてしまっているのですから、これは、とても不思議な吃驚現象といえます。

そして、もっと不思議で重要なことは、この産卵制御が、なぜ起きたのかということです。

カキ漁師のTさんは、次のように、切々と語りはじめました。

「昔のカキは、このように稚貝から卵を持つことはなかった。しっかりカキが大きゅうなってから卵を持つ、それが昔のカキじゃった!」

「ところがのぉー、最近は、焦げぇー小せぇー段階から卵を持つようになり、そのまま吐き出すもんじゃから、カキがすっかり弱おうなってしもーた。おかしな話じゃのー!」

「そうですか、昔のカキとは、そんなに違うのですか?」

かれらは、カキが成長して、ふっくらに育つことをすることを「『身入り』がいい」と呼びます。その成長を遂げた典型例が、10月23日の記事において示されています。

「ちがうでぇー、まったくちがう! このカキはのぉー、吐かんまま、大きゅうなったカキなんじゃー」

「5月の段階では、稚貝のほとんどすべてにおいて産卵していましたから、それがこのように変わってしまったということですか。いったい、あの卵は、どうなったのですか?」

「それはのぉー、卵が身になったんじゃー。身入り、身入りしたんじゃぁー」

「身入り? それは、卵を吐き出さずに、そのまま身に変わったということですか? そんなことを起こすことができるのですか?」

「そこが肝心よのぉー。カキは、両性じゃけんのぉー、いつでも女から男に変われるんじゃー!」

「それは、産卵した状態にまで至ったカキを、放卵せずに、身入りさせることができるといいことですか?」

「その通りじゃぁー!」

この会話を通じて、カキの産卵制御が目の前で起こっていることを理解したのでした。

「マイクロバブルで身入りが実現された」、その重要な出来事を体験的に学習した瞬間でもありました。

結果的に、マイクロバブルの成長促進作用が、この産卵制御という快挙を実現させたのでした
(つづく)。