前回(第11回)の記事において指摘した重要なブレイクスルーの第1は、私が、その立派なカキを食べてもよいかと尋ねた折に、みなさんが怪訝な顔をして、「Yes」とは決していわなかったことに関係していました。

私は、その日の翌日(1999年8月7日)から、腹痛を起こして七転八倒するにちがいないと思われていたのに、それはまったくの「予想はずれ」でした。

それどころか、あのカキをもう一度食べたいとさえ思っていたのですから、始末に負えませんね。

さて、読者のみなさまは、このブレイクスルーが「いったい、何であったのか」が、そろそろ、お解りでしょうか。

カキと腹痛を連想していただければよいのですが、それは、カキが持っている細菌(注(2))によってお腹を壊すことで、俗にいう「カキに当たる」ということでした。

漁師のTさんらは、私がカキに当たることを心配して、最後まで「Yes」とは言えなかったのでした。

ところが、私は、その年の6月以来、現地観測を行う度に、その試食を繰り返していました。

カキについては、ほとんど素人の私でしたから、私は私流の試験の方法として、大胆にも、それを食べることを思いつき実行していたのでした。

真に、「盲ヘビに怖じず」とは、このことであり、私は、その間一度も、そのカキに当たることはありませんでした。

これは、私がカキに特別に強い体質を有している、偶々運が良かったということではありません。

なぜなら、その翌年の3月には、カキを大量に食べて、大当たりし、それはそれは苦しんだこともありました。

その苦しさは、もう二度とカキを食べないと思わせるほどのものでした。

じつは、私が、そのカキ筏の現場で試食していたのは、マイクロバブルで除菌されていたカキを食べていたので、腹痛を起こしようがなかったのです。

そのことは、カキの出荷が始まる冬になってより明らかになり、その翌年(2000年)の夏に、広島貝養殖史上(360年)初の、真ガキの夏出荷という快挙がなされることに結びついていったのです。

この「夏にカキ」の出荷は、「Rの付く月」にカキを食べるという世界的常識を塗り替え、カキに関する広島県条例も改訂されるという事態にまで発展しました。

もちろん、NHKニュース7においても、大々的に放送されました。

こうなると、素人の私の「食い気を伴った好奇心」が少しは役立ったようで、その翌年には、その史上初の快挙を共に喜ばせていただきました。

第2のブレイクスルーは、カキの急成長に関することでした。

じつは、これが、先に示した大船渡湾における成長したカキ(10月16日のブログ再開記念記事において示したカキの写真)と非常に重要な関係を共有していたのでした(この稿続く)。

注(2):広島カキ県条例によれば、カキの生食基準においては、一般細菌数が100gあたり5万個以下であること、大腸菌数が300以下であることが定められている。これは、生でカキを食べた場合に、運が悪いと、あるいは大量に食べると、「カキにあたる」可能性があるということを示している。
この時、江田島湾で育ったカキ(マイクロバブルなし)では、前者が1万個、後者が48個であり、共に上記の基準内に収まっていた。このカキをマイクロバブルで除菌し、この両者において、18個以下の「未検出」という画期的な結果が6回連続の検査で得られた。
これが、広島県条例の改訂に結びつき、私も、それに立ち会ってほしいという依頼を受けた。同時に、この改訂によって、広島産のカキを大阪以北にも運搬できるようになった。東京でのカキが、主として宮城産であった理由は、この旧県条例において、大阪以北には運搬できないようになっていたからであった。
以下に、マイクロバブルを用いた殻付カキの除菌をしている様子を示す。この水槽内に約4万個のカキが入っていた。除菌時間は約15時間で、上記の完全除菌という快挙が達成された。

カキの除菌の様子