これまで、カキが稚貝から成長を開始した様子を考察してきました。

そこで、カキの成長を示す決定的な写真を示すことにしましょう。撮影日は1999年8月6日です。奇しくも、広島に原爆が投下されたのは、55年前の、その日のことでした。

当時のカキたちは、地上の異変と災禍に、さぞかし驚いたことでしょう。

19990806kaki

さて、この重要な写真を詳しく観察しましょう。幸いなことに、左に、私の左の中指の先が写っています。

これを基準にしますと、このカキの殻の横長がおよそ解り、その長さは約6㎝もありました。

そして、横長と縦長の比を約1.5としますと、その殻の縦長は、約9㎝にもなります。

これは、真に、抜群に成長したカキの典型例だといえます。黒い鰓(えら)、白く盛り上がった身、大きな貝柱、いずれも、これから大きく成長しそうな気配をいくつも漂わせていました。

今、思い出しましたが、私は、このカキを見ているうちに、それを食べてみたいと、無性に思うようになりました。

「このカキを食べてもいいですか?」

こう尋ねてみたのですが、カキ漁師のTさん他、周囲のみなさんは、何も言わず、無言のままでした。

ーーー おかしいな、どうしたのだろう?

Tさんの顔をよく見入ると、怪訝な顔つきになっていました。

「このカキが、あまりにも美味しそうなので、食べますよ。食べてもよいですね!」

しかし、よいという返事は、とうとうありませんでした。

私には、カキが大好きで、いつもよく食べるという食習慣はありませんでした。

しかし、現場でのカキの改善研究を行ううちに、実際に口の中に入れて食べてみるのが、その品質評価において一番わかりやすいのではないかと考えるようになりました。

それゆえ、筏のうえでは、その開始以来、常にカキを食べて確かめるという行為を行ってきていました。

ここが、現場の漁師たちと違うところでもありました。

ですから、その時も、「食べてみたい」と思ったのは、その行為の延長であり、自然のことだったのです。

ところが、この時には、だれからも、OKのシグナルを得ることができませんでした。

それでも私の好奇心と食欲が勝ったのだと思いますが、かれらの無言のNOのサインを理解しないまま(そのようには理解していなかった)、思い切って食べてみました。

みごとに美味しく、その味に感激しました。

ーーー こんなにおいしいカキを、かれらは、どうして口にしないのか?

と、かれらの態度を、真にふしぎに思ったしだいでした。

じつは、このときに、カキは大きいものよりも小さいものの方がおいしいことを知りました。

しかし、私は、このカキに、重要なブレイクスルーのヒントがあったことには、まだ気づいてはいませんでした(つづく)。