5. 水圧実験
一番前の席の生徒が一番早く手を挙げたようで、彼(A君)を指名しました。彼に、実験机の上に登っていただき、私の合図とともに、この板を押してくださいという要領を教えました。
これは、水槽の中に隔壁を置き、片方の側に水を入れていきます。隔壁の中央部分は開いていますが、そこに発砲スチロールの板を置いていますので、簡単には水は反対方向に流出していきません。
水の圧力でスチロールの板を押していますので、その隙間から水が漏れだすことはほとんどありません。
こうして水槽いっぱいに水がたまりましたので、後は、A君に、その発砲スチロールの板を勢いよく押していただくだけのことになりました。
「A君、私の合図で勢いよく、その板を押してください。用意はいいですか」
さて、どうなるか、緊張の一瞬であり、生徒のみなさんもA君がどう押すか、そこを注視していました。
「はい、押してください!」
A君も、ここぞとばかり、力を入れておしたようです。後で聞くと、空手部で生徒会長だったようで、申し分のない人選だったようです。
ところが、その押した直後、何が起きたかわからないようになりました。その瞬間に、生徒のみなさんからは、「あっ!」という驚きの声もあがってきました。
よく見ると、大きな実験机は水でびしょぬれ、遠くの私のパソコンのあるところまで水しぶきが飛び散っていました。
そして、目の前には、真っ二つに割れた発泡スチロール板がありました。
「そうか、勢いよく押したのはよかったけど、押す位置が少し上側過ぎたので、発泡スチロール板が割れてしまい、その勢いで水が飛び散ったのか」
ようやく、何が起こったのかを私も理解することができました。
いつもの実験ですと、実験者の手を引いて、「ここを押してください」と教えていたのですが、今回は、私があいまいな指示を与えた結果が、このような事態を招く原因になったようでした。
こうして、だれも予想ができなかった大量の水が大きく飛び散る事態となってしまったのでした。これはこれで、みな吃驚(びっくり)したのですが、「もっと下の方をおしてください」と丁寧に教えておくべきでした。
そのことをみなさんに説明して反省しましたが、「まさか、こんなことが起こるとは思いませんでした。これもA君のおかげです」というと、一斉に笑いが生まれました。
これも体験的実験ならではの出来事であり、私にとっても貴重な体験となりました。
最後に、常願寺川における土石流災害、水と土の災害に関する地を這うような取り組みに関するDVD映像を見ていただき、その後に授業のまとめを行って、本出前授業を終えることができました。
冒頭でもふれましたが、今回の授業は、150分の長きにわたるものでしたが、その間、一人も私語をする生徒がいなく、散漫になる方もいませんでした。
その意味で、私にとっても貴重な授業体験をさせていただくことになりました。
授業のまとめのなかで、今回の授業を振り返らせていただきました。
冒頭に示した大切な言葉は、「なぜ?」、「吃驚(びっくり)」、「もしかして」の3つでした。そこで、本授業において吃驚した回数を各自に書いていただきました。その結果を以下に示します。
2回 4人
3回 12人
4回 5人
5回 2人
6回 1人
7回 1人
8回 1人
10回 1人
11回 1人
これらからも明らかなように、大半の生徒が何回もびっくり体験をしています。
そして、この「びっくり回数」の多さからは、十分な手ごたえがあったことを理解させていただきました。
また授業の感想のほとんどには、「楽しかった」、「びっくりした」、「おもしろかった」という言葉が寄せられていました。
理科の現象にびっくりし、楽しさ、おもしろさを十分に感じることができる生徒たちがたくさんいた、この事実は重要だと思いました。
(この稿はおわり)
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