本田選手の無回転キックの秘密の第一は、その靴にあったということで、それが連日マスコミに取り上げられるようになりました。

 靴メーカーにとっては、絶好の機会が訪れたようで、すでに同じタイプの靴が7万足売れ、今後も10万足を増産するとのことのようです。

 さて、無回転キックの第二の秘密は、本田選手が洗練させた蹴り方にあったようです。

 開発から2年ということは、それだけ本田選手にとっても修行の期間を要したことを意味し、その完成に向けてたゆまぬ努力をして、あのキックが蹴れるようになったのだと思います。

 ここで、ミズノの技術と本田の技能が融合していったのです。

 ですから、他人ができないことができるようになったのです。 この修行の結果が、あの本番の桧舞台で実ったのですから、本田選手は大変に「セレンディピティー(幸運力)」にすぐれた方といえます。

 まさに、彼のサッカー人生を変えてしまう一蹴りになったのですから、立派なものです。

 諸情報を総合すると、彼は、無回転キックを足の内側と足首の両方でく凹面をつくり、そこにボールがピタッとはまったときに、ボールを無回転にして蹴ることができるようです。

 可能なかぎり、丸いボールに沿って内側も丸くして蹴る方法、これが無回転を誘起するようです。

 この時に、靴の内面上部の滑り止めラベルが有効に働き、蹴った瞬間の回転力を削ぐように作用させているのだと思います。

 サッカーのボールは回転させて曲げる、この常識を打ち破り、無回転にすることによって、その予期せぬ弾道を創り出したのですから、これは技法としては、さらに上位の開発と見なせます。

 おそらく、野球でいえば、カーブが開発されて、それに対抗する手段として無回転のナックル投法が開発されたのだと思いますので、今回のサッカーの場合も、これと同じ開発の流れに沿ったものといえます。

 ですから、ワールドカップという桧舞台で無回転キックが象徴的に決められたことは画期的なことであり、世界の多くの方々が、その技術と技能を目の前にして認識を新たにしたことは小さくない意味があります。

 なぜなら、これに続いて、さらに日本を中心に十何万、そして何十万人の方々が、それを可能とする靴を身につけ、本田選手のように、無回転キックを蹴ろうとする行為がなされることになるからです。

 この技術の伝搬がサッカーボールを通じて、日本はおろか世界中へと広がっていくのですから、事は重大です。

 ですから、あの鮮やかな無回転フリーキックの持つ意味は小さくなく、サッカーの歴史において新たなキックに関するページが加わった瞬間でもありました。

 次の試合でも、その「粘り強い修行」と「開発の苦労」が含まれた無回転フリーキックの「第二弾」がゴールネットを揺らすとよいですね。

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