蒼い富士山を見続けていて、その姿が微妙に変化していくことに気づきました。上空約1万メートルですから、その視野は、南アルプスから富士山までの中部地方のほぼ全域が見えます。

 南アルプス連邦の山々の姿は変わらないが、富士山は変わる、ここがおもしろいところです。それは、富士山が単独で存在し、完全な円錐状構造物ではないからです。

 ですから、約1万メートル上空からでも、その見る角度によって微妙に異なるのです。昔、葛飾北斎は富獄36景を書きましたが、その富士山がみな違うように、時間ととともに蒼い富士山の形がどんどん変わっていきました。

 「これは、おもしろい。こんな富士山のパノラマを見たことがない」

 眼下には、富士山の下部にかかった雲の下で地上の町並み、道路や海岸線が鮮やかに見えていました。

 機内で聞いていた番組は、「オールナイトニッポンクラシックス」、パーソナリティー「アンコー」こと、斎藤安弘さんの声が一際大きく聞こえてきました。

 「オールナイト ニッポン クラシックス、フレッシュな夜をリードする オールナイト ニッポン、青春の思い出は心の翼!」

 よく聞いてきた名セリフ、名調子です。

 例のトランペットによる「パー、パパッパ、パパッパラ、パッパというオープニング音楽が聞こえてきて、私も少し鼓舞されました。

 若い頃、このオープニングソングを聞いて、「さぁ、これから、オールナイトで聞くぞ!、やるぞ!」という思いを寄せていたことを思い出しました(すこし単純すぎますが)。

 アンコーさんのおかげで、快調に1960年代の懐かしい音楽を聞かせていただき、さらに楽しい一時を過ごさせていただきました。

 この番組の最後は、中島みゆきさんの「別れ歌」でした。彼によれば、泣いているように唄われていることが、彼女の特徴だそうでした。

 もうすぐ羽田に着くころ、機内音楽では、再びアンコーさんの「オールナイト ニッポン」のオープニング放送が始まっていました。

 これを聞いて、再び若い頃のことを思い出し、なにやら、その頃の元気が湧いてきたような気がしました(つづく)。


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