日本高専学会年会におけるもう一つのハイライトは、長岡技術科学大学の新原学長の特別講演でした。

これは、半世紀に近い高専の歴史にとって、非常に重要な出来事でしたので、私にとっても、大変意義深いものでした。

その理由を先に述べさせていただきます。

新原先生は、日本を担う「技術者づくり」において、技術科学大学と高専が連携して取り組むことが最高の形態であり、これを実現していかねばならないと、きっぱり、そして力強く、主張されました。

新原先生は、鹿児島県出身で、気骨のある薩摩人の風貌を感じることができる方です。

しかし、大学受験においては、志望の大学に受からず、自分は決して「優秀なエリーではなかった」ことを、講演の最初によく話をなされます。

今回も、その話をされてから、本題に入られましたが、ここには、新原先生独特の「お考え」があります。

その決してエリートでなかった先生が、数々の研究成果を出され、論文1000編、著作35冊、特許220以上の業績を創出されるまでになったのです。

先生は、それが「3i理論」の「おかげだ」といわれるのです。この理論は、次の3つの「i」から成り立っています。

  intuition(ひらめき)

  invention(発明)

  innovation(革新)

これを、簡単に説明させていただきますと、最初の「ひらめき」がとても重要です。問題解決や課題を解決することを粘り強く考えていると、それらの解決のための「ひらめき」が自然に浮かんでくるというのです。

そのためには、その仕事を好きになり、好きになれば、それを考え続けることができるというのです。

今回も、二次会へ向かう歩道で、次のようにポロリといわれました。

「じつは、この30年間考え続けた材料の開発ができました」

30年ですから、この時間のスケールが人並み外れています。前に聞いた話では、7、8年考えて開発したものがあったそうですので、常に何年、何十年と考え続けているのだと思います。

考えて、考え抜いて、独創的なアイデアを常に生み出す、このことを若い時から訓練されてきたのだと思います。

この考え抜くことと、その気持ちの大切は、この数年における私の心境においても、なんとなく共感できることです(つづく)。

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