南アフリカラグビーチームであるスプリングボックスの主将フランソア・ピナールは、マンデラ大統領から「お茶」に招待されます。

大統領執務室に緊張して入ってきたピナールに対して、大統領は丁寧な気持ちでもてなします。

「ラグビーは、イギリスから受け継いだ重要なものだが、それよりも勝る最高のものは、アフタヌーンティーだ!」

こういいながら、フランソアの紅茶を自ら注ぎ入れます。そして、この映画の前半のハイライトのシーンを迎えます。

「あなたのリーダーとしての哲学は何か?」「どうのようにして、チームのみんなに本気を出させるのですか?」

ずばり、このように尋ねられ、フランソアは、緊張した面持ちで、「自ら手本を見せます。懸命に闘っている姿を見せれば、みんなが付いてきます」とだけ返答します。

大統領の質問は続きます。

「それでは、チームの仲間から『限界』以上の力を引き出すには、どうするのですか?」

「これは、リーダーが常に抱いている難しい課題です」

こう尋ねられ、フランソアは何もいえずだまったままでした。そこで、大統領はさらに続けていいました。

「私は、『ひらめき』が大事だと思う」

「ひらめき(inspiration)」という言葉がマンデラ大統領からいきなり出てきたので、今度は私の方が吃驚(びっくり)しました。

長岡技術科学大学の新原先生は、この「ひらめき」をintuitionといい、日本沈没の田所雄介博士は、「鋭く、大きなカン(直観)」といっていたので、この「ひらめき」の意味をふかく検討していたからでした。

そして、これまで、問題にしてきた「重要概念」が、同じようにマンデラ大統領の口からも出てきたので、思わずうれしくなりました。

「やはり、そうか。彼は、鋭く、大きな『ひらめき』のことをいっているのだ!すばらしい!」、こう思い始めていました。

さらに、大統領は続けます。

「では、どうすれば、持っている以上の力を引き出す『ひらめき』を与えられると思いますか?」

「そして、周りのもののやる気を引き出すことができるのですか?」

映画監督のクリント・イーストウッドは、ここが勝負だと思ったのでしょうか、マンデラ大統領役のモーガン・フリーマンをアップで撮り続けます。そして、ここで、その大統領の本音を十分に吐露させたのでした。

「この国にも『ひらめき』が必要なのだ!新しい国を築くために、国民から持っている以上の力を引き出さねばならないのです」

さすがのフランソア・ピナール役のマット・デイモンも、その言葉には、黙って耳を傾けているだけでした(つづく)。


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