「なるほど、これはすばらしいや、このガラスを集めてステンドグラスを作ってみたいという気持ちはわかりますね。まことに格調高い趣味を見つけましたね」

彼は、「良い趣味」といわれてうれしいやら、「いや、美術作品だといってもらいたい」ということなのか、とても不思議な表情を浮かべていましたが、私が素直に心から評価したので、その作成方法やこつをより一層目を輝かせて説明し始めました。

こうなると、会社の応接室は、趣味の説明会に早変わりし、私もおもしろいので、どんどん質問していきました。

まず、対象とする物の下絵を書きます。それから、それに沿って色とりどりのガラスの破片を並べていきます。

このとき、ガラスの色や形、さらにはサイズを考え、その最適の組み合わせを目指していくのです。

これは、ある意味でジグソーパズルの最初の過程とよく似ています。ただ、それと違って、より難しいのは、単なる形の整合性によって破片を併せていくのではなく、色とサイズを選びながらアートとしての芸術性を高めていくことにあります。

これが終わると、ガラスの合間に石膏を入れて、その模様を固定していきます。その周囲も宮古島産の海砂を散りばめて背景を形作ります。

「いや、これは大変な作業だ!しかし、一度やり始めると、これは止められなくなるほどおもしろくなっていきそうだ!」

最後は芸術作品となっていくのですから、その芸術性においては、その優劣はすぐに見分けられます。

それにしても、気の遠くなる、おもしろいアートを考え出したものだと、ほとほと感心させられました。

そこで、このアートができるまでをもう一度探索してみることにしましょう。これで、どのくらい気が問くなるのかがより明確になるでしょう。

・誰かが、南の地のどこかでガラスを作る。

・それが何かの事情で海に流される。

・海に流されたガラスの瓶や容器が沈まずに宮古島の浜まで漂着する。

・それが長い年月を経て浜の砂浜に打ち上げられ、砂で埋まらずに地表に出たままの姿を晒し続ける。

・途中で波に洗われ、小さな破片となり、その破片の角が取れる。

・ガラスの色がくすみ、見事に淡い素敵な色を呈するようになる。

・それを作者が見つけ、かごに入れる。

・集めたガラス片をステンドグラスにする。

この最後の2つの工程は、ほんのわずかであり、この過程を1日に例えれば、それらは、それこそ11時59分59秒を幾分過ぎた頃から始まる作業なのです(つづく)。

MR900406652