こう考えると、この作者は、とても幸福な時間を費やしているかもしれません。

しかも、その最後の仕上げは自分自身で行うのであり、その芸術性を高めるのも自分しだいということですので、これは大変な醍醐味を覚えることになるのではないかと思います。

なるほど、あの忙しい彼が、これに没頭するようなった理由が少しわかりかけたような気がしました。

時間もお金にも代えがたい、本当に貴重な時間を投入することができる、ここには、本当の芸術が生まれる要素があるように思いました。

しかし、これは彼が本当の芸術家として育っていくことの「十分条件」ではありません。

それらは、あくまでも必要条件でしかなく、それを実現するには、これまた、気の遠くなる作業をして修行をしていかねば、その目的は達成できないのです。

いくら貴重な作業をしているといえども、彼と師匠の作品とでは小さくない差異がありました。

価値ある作業こそ、時間と労力を惜しまずに注ぎ込み、そこに本物の価値を打ち立てていくことに意味があるのです。

結局時間を忘れて、あああだこうだと芸術論議をさせていただきました。

帰り際に、そのガラスの破片とペン立てをいただきました。今度、学生たちに、これらを見せてあげようと思っています。

帰りの新幹線のなかで、その破片を取り出し握ってみました。なにか、何か心が温まりそうで宮古島の潮の匂いがしそうなガラスでした。

いつか、宮古島に行き、私もガラスの収集をしてみようかという気持ちになりました。

ついでに、あわよくば、マイクロバブルで新しいガラスをつくり、それらの破片が宮古島に漂着したらどうなるのか、果たして、その破片の色や肌触りはどうなるのか、そのような思いが自然に湧いてきました。

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