あるとき、文化系で、少し前歯の出たメガネの船長に、日ごろの心配を尋ねたことがあった。

「船長、今度の『コーカイ』の準備はなかなか大変で、毎日頭を痛めています」

「あなたの頭は、普通の人よりやや大きめですから、少々は大丈夫でしょう!」

「はい、これぐらいでは、決して壊れるような頭ではありませんので心配はいりません。

しかし、『コーカイ』に出た時の医療の問題、それから、発電エネルギー、水、さらには教育はどうなるのか、いろいろ考えると夜も眠れなくなりそうです」

「そうですか。さすがキリキリ総合研究所の所長ですね。夜も眠れないほど熱心に考えていただいているのですから、文化系の私としては、小躍りするほどうれしいことです。

ついでに、もう少し睡眠時間を削って、それらの問題をよりふかく考えていただくとありがたいですね。なにせ、私は文化系ですので、あなたを信用するしかありません」

「文化系の船長に、そこまで信頼されるとは、とてもありがたいことですが、より厳密にサイエンスとして検討しいく必要があると思っています。

医療、発電、水、教育のサイエンスとして・・・・」

こう食い下がると、文化系の船長の目付きが変わりました。

「医療については、最初の『コーカイ』の時にずいぶん検討させていただきました。

キリキリ総合病院の成果は、今も密かに受け継がれています。赤ひげ先生二世も健在ですよ!」

「そ、そうですか。いつのまにやらという気がしますが、医療の面は心配ありませんね!」

「心配いりません。これは私が文化系であることとは関係していません。

今度は、もっと立派な総合病院を打ち立てる必要がありますね。そしたら、このサンタマリア号には世界中の方々が訪れてくるようになると思います」

「ところで、虫歯を治す薬はできたのでしょうか。当時のNHKがとても関心を持っていたようですが?」

「これはなかなか難しかったようです。私も、それを期待していたのですが、それは実現できていません。私の歯をみれば、そのことがおわかりになると思います」

「それでは、教育はどうでしょうか。これも心配です」

「これについては、少なくない反省があります。その時は、子どもたちが活躍してくれたのですが、もう少し高度なレベルまで持っていく必要がありました。

やはり、最新の科学技術をどんどん吸収できて、それを駆使できるようになる必要があった、ここが一番の反省点です」

「そのことは、私のキリキリ総合研究所とも関係するところですね」

「そうなんです。そこですよ。その意味で、私は、だいぶ前に、テレビアニメのガンダムユニコーンという番組で、主人公が『アナハイムコーセン』の学生であったということに注目させていただきました」

「アナハイムコーセン?」

「そうですよ。『コーセン』です。『コーカイ』ではありませんよ。私は、このサンタマリア号のなかに、まず、『コーセン』を作るべきだと思います。

そして、あのようなガンダムユニコーンのような主人公を育てるべきだと思います。所長、そのことを研究していただけないでしょうか」

こういわれて、私は、少々どころか、大きな動揺を隠すことができなかった。なぜなら、その「ガンダムユニコーン」とやらを見ていなかったからである。

「さすが、文化系、何が出てくるのか、わからない・・・・・・」(つづく)

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