「アナハイムコーセンか、それは、抜群によいアイイデアだ!」

さすが、文化系が考えることはちがうと思いながら、その思いは、「コーセン」に及んでいた。

「名前はどうしようか。『サンタマリアコーセン』にしようか、それとも『キリキリコーセン』のほうがよいか。今度、船長の意見も聞いてみることにしようか」

「コーセン」は、1960年代の日本において、高度成長を前にして技術者不足が指摘され、それを補うために全国各地に設置された。

この設置には、わが国の学校制度の発足においては珍しく、産業界からの強い要望があった。

「実践的な技術者」、「中堅技術者」の養成が当初の目標であり、その特徴は、中学校の卒業生を受け入れて、5年一貫の教育を行うことにあった。

この「コーセン」は、日本の高度成長とともに発展し、時代や地域に徐々に溶け込んでいった。

そして、その設立から60年余を経た今日、地味ではあるが、その真価を発揮するようになったのである。

文化系の船長は、自分が関心を抱くと徹底的に調べつくすという、いわゆる凝り性の方であった。

あるとき、気になっていた「コーセン」のことを船長に尋ねてみた。かれは、うれしそうに、自分の取材ノートを3冊も持ってきて、次のように語り始めた。

「いやぁ、『コーセン』というところは、じつに、おもしろい、いや、おもしろいというよりもすばらしいところです。わが国に、こんなところがあったのかと思うほどですよ」

「それは、どういうことですか?世間では、あまり知られていないようですし、私もよく知りませんでした」

「そうでしょう。あなたが知らないということは、ある意味で、よいことなのです。

この国で、みんながよく知っていることで、よいことなどほとんどないのです。ですから、これからも知らない人がたくさんいる方がよいのです」

「そうか、知らない人が多くいるということは、その良さを知った時に、それだけ多くの方が感激する可能性があるとも考えることができますね」

「そうですよ、いまどき、『コーセン』は世界にも珍しいユニークなところなんです。これは、わが国が生み出した『貴重な存在』といえますね」(つづく)

MR900433149