「第一の特徴は、散髪屋に行かない、第二がタバコを吸ったことがない、これでは、まだまだ生粋の変人とはいえません。その次は何ですか?」

「それはそうでしょう。それらだけでは十分とはいえません。とにかくこの方は、世俗のことにはほとんど拘りがないのです。

たとえば、世俗といえば、お金とか、お酒とか、あるいは衣服などがあるでしょう。、これらについて興味を示さないのです」

「そんなことはないでしょう。そうだと猿と同じじゃないですか!」

「猿ではありません。猿だと金や酒の価値を理解することができません。この変人は、その価値は理解しているのです。しかし、それらに拘らないのです。この意味がわかりますか?」

「むずかしいことをいいますね。わかりやすく説明していただかないと私の頭では理解できません」

「そうでしょう、あなたの頭できちんと理解することは不可能に近いことだと思います。要するに、価値は理解していても拘りがないから、結局、分かりやすくいいますと、気前がよいということなのですよ!」

「そうですか、庶民の私には、よく理解できないことですし、ありえないことです」

「そうでしょう、あなたとは別次元で生きておられる方なのです。先日も、奥さまの妹の子どもが生まれたときに、お祝いをいくら上げるかで、相当揉めていましたよ!」

「夫婦喧嘩ですか、我が家でもよくあることです。ちょっと立ち入って申し訳ありませんが、どのように揉めたのですか?」

「あなたも俗世間の人ですから、興味を抱かれることでしょう。じつは、かなりの高齢出産でしたから、それに感激したのでしょう。その子が22日に生まれたから、22万円をお祝いあげたらどうかと奥さんに提案したのです。

これには、奥さんも吃驚ですよ。22日に生まれたから、22万円というのは世間の常識に合いません。奥さまが抵抗したのは無理からぬことでした。ところが、頑として彼は、その主張を変えなかったのですよ」

「それでも、奥さまは抵抗し続けたのですか?」

「もちろんです。ただ、抵抗すればするほど、分が悪くなっていき、最後には根負けしてしまう、これが、その顛末でした」

「ユニークで、なかなかおもしろい話ですね。奥さまも落城したということですか」

「ところが、ただでは転ばないのが、この奥さまで、その後に反撃が開始されました」

「えっ! どういうことですか? その反撃とやらは?」

「それから、しばらくして、また子どもが、その妹さんから生まれたのです。しかも、今度生まれたのは男女の双子だったのです。ここで、奥さまが知恵を働かせての大反撃、これが痛快でした」

「目には目をですか。当然お金で反撃したのですよね!」

「その通りです。今度は、生まれた日は関係ない、二人だから30万円のお祝いをあげると主張したのです。これをご主人がいう前に提案したので、今度は彼の方が面食らって、ちょっと待てと絶句したのでした」

「奥さま、してやったりですね」

「そうです。この反撃がみごとに功を奏し、それが実現したのでした」

「お祝いを貰った妹さんは、さぞかし喜ばれたことでしょう」

「それは、この上ない喜びだったでしょう。なかなかない話ですから。じつは、これには、もうひとつふかい意味のある話があったのです」

「またまた、気になる話をなされますね」(つづく)

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